――就寝時に使用する寝具の衛生管理についてはどうでしょうか?
山の上は天気が悪いことが多く、毎日布団を天日干しすることはできません。予備を増やしたとしてもそれを保管する場所もないのです。そんなわけで、布団を利用されるお客様はインナーシーツ(キャンプシーツやシュラフカバー)をご持参ください。もしくはシュラフをお持ちください。枕については不織布の枕カバーを用意しています。
シーツのほか、マスク、体温計、アルコールジェル、ジッパー付きビニール袋(触ったゴミはこれに入れて持ち帰る)もご持参願います。
――トイレや玄関の戸など、不特定多数の人が触れる場所の消毒は?
保健所の指導のもと、手を触れやすい場所は各部署の担当者が1時間おきにアルコール消毒液で消毒し、拭き取ります。
アルコール消毒液は山荘内の各所に置いてあります。山荘内ではマスクの着用もお願します。
万が一の事態に備えて保健所や県警の山岳救助隊と連携
――もし、新型コロナウイルス感染症が疑われる登山者が発生した場合、どう対応するのでしょうか。
山小屋に着いた際、体調がすぐれない場合は必ずフロントスタッフまで申し出ください。その際はマスクだけでなく、フェイスシールド、手袋も着用させていただく場合があります。
高山病が起きやすい標高2500メートル以上の山では低酸素・低気圧のため風邪など症状がよくなることはありません。急激に悪化する可能性もあります。特に持病(呼吸器疾患、循環器疾患、糖尿病、高血圧などの生活習慣病ほか)のある人は新型コロナウイルス感染症が発症した際、重篤化する恐れがあります。
高山病か新型コロナウイルス感染症かの区別も困難です。ですから、高山病の可能性がある山に登るには特に注意が必要です。
予約日の2週間前から発熱、咳、風邪などの症状がある方、ご自身の身近に感染者が出た方は、登山をご遠慮ください。登山途中でも体調がすぐれない場合は迷わず下山していただきたいと思います。
それでも万が一、新型コロナウイルス感染症と疑われる登山者が発生した場合に備えて、山荘内に隔離した部屋を用意しています。
保健所や県警の山岳救助隊とも打ち合わせを重ねていますが、新型コロナウイルス感染症が疑われる場合、救助要請があっても、通常の救助対応が困難なことをご理解願いたいと思います。
私たちはできることは何でもやろうと、精いっぱいの感染防止対策を行っています。しかし、山小屋だけがいくらがんばってもできないことがあります。
山小屋に到着して、「お疲れ様! 乾杯」となると、どうしても気が緩み、集まって密になりがちです。登山者、一人ひとりが感染を避ける意識を持ったうえで、山を楽しんでいただきたいと思います。
(文・米倉昭仁)