■大学入試は、得意分野で力が発揮できれば合格できる
たとえば理系分野にとがった教育をする東工大では、2次の受験科目は数学と理科と英語のみです(しかも数学と理科の理数科目が300点なのに英語は150点です)。東大の2次だって理系は社会がなくて理科、文系は理科がなくて社会と受験科目が異なりますし、理系は数学120点、国語80点なのに対し、文系は国語120点、数学80点と配点も変えてあります。
つまり、きちんと個々の得意分野で力が発揮できれば合格できるようなシステムづくりをしているのです。
東大の学生には、特定の分野はとびぬけているけれど、その分、他の分野(生活面も含め)が抜け落ちているような人たちが少なからずいました。勉強は持ち前の集中力を発揮して何時間でもできるのに、生活面ではしょっちゅう遅刻するとか忘れ物をする、などなど。
同じ学部にいたH君は、とにかく行動力がありました。薬学部を卒業した後に医学部に入学し直し、その後は国際的医師団体に所属して、貧困で困っている国々を飛び回りました。帰国後は省庁が管轄する団体に入ったり、突然海外に旅立ったりと、とにかく多方面で活躍しているそうです。
大学の入り直しや転職のような、普通の人なら悩んで躊躇(ためら)うようなことを、パっとすぐに行動に移せますし、興味があることならなんでもやってみようとするのです。こうした性質は、かなりプラスな能力ではないかと思います。
さて、そんな驚きの行動力をもち、理系(主に医療系)の深い知識に精通する彼ですが、内申点が重要である高校受験で果たして志望した学校に入れたかどうかを考えると、果たしてどうなのかな、と悩むところです。
彼は、自分のツボにハマった分野ではとことん深く掘り下げるけれど、好きでないものにはほとんど興味を示さない性格だったからです。彼が、興味をもたない体育や家庭科や美術で良い点数をとれるようにがんばる姿は、いまいち想像できません。「入学のための手段」として頑張るかもしれませんが、そのためには彼本来の力を抑圧し、偽った姿で学生生活を過ごすことになります。