EPDSのスコアで産後うつが早期発見でき、悲しい事件を防げるのなら、素晴らしいことだ。さらに内田医師は続ける。
「また、別の研究によると、月経困難症の傾向がある人は、月経期において、『子どもへの対応能力が低下する』『夫のサポートが十分でないと認識する』『生活に対する満足感が低い』という傾向がみられています(注3)。そのことから、虐待や夫婦喧嘩に発展することは十分に考えられます」
月経困難症とは、一般的には「月経痛」「生理痛」と呼ばれる症状だ。症状が重いと、痛みのために数日間寝込む人や、嘔吐を繰り返す人もいる。とても家事・育児どころではないだろう。
「『月経のつらさは慢するしかない!』と思わずに、生活に支障があれば、鎮痛薬や低容量ピルの使用をぜひ検討してみてください。そして、自分や家族、友人が『育児で追い詰められている』『虐待しているかもしれない』と感じた際には、189(児童相談所の虐待対応ダイアル)に相談し、自分や子どもを傷つける前にヘルプを求めてほしいと思います」(同)
■PMS・PMDDは「敏感な人がなりやすい?」
さらに私は、PMDDの女性は、HSPの傾向があると感じている。HSP(Highly Sensitive Person)は、「気質」を指す心理学の言葉で、生まれつき「非常に感受性が強く、敏感な気質の人」という意味だ。
「PMDDの発症に関しては、不調過敏などの性格特徴、家族との対人問題、ストレス対処行動としての飲酒との関連が認められている(注4)ことから、『もともとの女性の性格やストレスとの付き合い方』『もともとの夫婦関係』が、月経前の不調に影響を及ぼすことが考えられます」(内田医師)
不調過敏は、「自分の身体の不調にも敏感」ということ。PMDDの人は、自分の身体の小さな不調が、そうでない人より大きく感じてしまうのかもしれない。
「自分には『神経質すぎるところはないかな?』『夫婦で認め合い、支え合えているかな?』と、自分と家族を振り返ってみることが、自分の人生の充実や安定に繋がる鍵と言えそうです」(内田医師)