写真はイメージです(Getty Images)
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 突然イライラしたり、不意に涙が出てきたり、生理前は自分が制御不能になる――。月経前の心身の不調を医学的には「月経前症候群:PMS(Premenstrual Syndrome )」や「月経前不快気分障害:PMDD(premenstrual dysphoric disorder)」という。日常生活にも支障をきたすこともあるが周囲の理解を得られないことも多い。出産前後に初めて症状が出てくる人もおり、夫婦関係や親子関係に影響を及ぼす可能性が指摘されている。

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「臭い! 食事をする前に足を洗ってきて!」

 関東在住のAさん(40代 既婚)は、6年ほど前、仕事から帰宅した夫の足の臭いが気になり、何度も注意した。すると夫はクローゼットの引き出しを蹴とばし、引き出しはバラバラに。それを見たAさんはカッとなり、作ったばかりの熱々の鍋をシンクに投げつける。土鍋が割れ、具材が飛び散った。

 その大きな音で、おんぶで眠っていた1歳前の娘は火がついたように泣き出し、3歳の息子も泣きそうになりながら、「パパのためにもう一度お鍋を作って!」と訴えた。

 しばらくしてAさんは子どもたちを寝かしつけ、少し気持ちが落ち着いてきたため、残りの具材と別の鍋で再び料理を作り、就寝。

 翌朝、Aさんは澄み切った青空のように爽快な気持ちで目覚めた。月経が始まったのだ。

「生理前に夫とケンカになることはしょっちゅうです。きっかけはいつも些細なこと。夫は相当なことがないと物に当たったりしない人ですが、私は生理前になると、ストレス耐性がいつもよりかなり低くなるため、突然キレて物に当たります。そのため、わが家には至るところに、『反抗期の男子でもいるの?』というくらい、ボコボコと穴が開いているんです……」

 Aさんは高校生のころから月経痛に悩まされてきた。しばらくは市販の鎮痛剤でやり過ごしてきたが、だんだん服用回数が増えてきたことから、25歳のころに婦人科にかかり、ピルを飲むようになっていた。

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いま振り返るとあのころは…