インフルエンザワクチンは、インフルエンザへの罹患や重症化を防ぐために接種する予防接種です。とはいえ、新型コロナウイルスワクチン同様、インフルエンワクチンを接種したからといって、インフルエンザに絶対かからないというワクチンではありません。発症を予防することや、発症後の重症化や死亡を予防することに関して一定の効果がある点で有効であるとされています。

 また、新型コロナウイルスに変異株が存在するように、インフルエンザウイルスには多くの亜型が存在しており、ウイルスの構造は常に少しずつ変化しています。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、病原体となるウイルスの感染能力を失わせたものが原材料となるため、ワクチンを接種して得られた免疫は時間とともに弱まります。そのため、流行するまでに、毎年ワクチン接種を終えることが望ましいとされているのです。

 インフルエンザワクチンが新型コロナウイルス感染を予防する可能性もすでに示唆されています。米国のコーネル大学の医師らは、イタリアの高齢者を対象にインフルエンザワクチン接種率と新型コロナ感染時の死亡率を調べたところ、インフルエンザワクチンの接種率が40%の地域の死亡率は約15%だった一方で、インフルエンザワクチンの接種率が70%もあった地域では死亡率が約6%まで低下していたことがわかったと報告しています。筆者らは、インフルエンザワクチンを接種したことにより免疫力全体が活性化し、インフルエンザのみならず、新型コロナウイルス に対する免疫力を高めた可能性があると考察しています。

 待ちに待った新型コロナウイルスの軽症者向けの内服薬も、早ければ年内に国内で流通される可能性が出てきたと報じられています。12時間おきに5日間、計10回服用する内服薬であり、臨床試験(治験)の中間結果によると、軽症や中等症の患者が入院するリスクを半減させることができたということで、重症者を減らすことができると期待されています。

 コロナのワクチンと内服薬が十分に行き渡れば、コロナパンデミックの終息も見込めるでしょう。私たちができる最大の備えが予防接種であることは間違いありません。国境が開けば、またインフルエンザも再度流行する可能性も十分にあります。今年も流行しないだろうと接種を控えるのではなく、免疫を高めるためにもインフルエンザワクチンを毎年接種することが最大の備えと言えそうです。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

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