以後、藤井は史上最年少17歳で初タイトル棋聖位を獲得。現在では堂々たる史上最年少の五冠保持者であり、藤井が和服姿で戦う光景はすっかり見慣れたものになった。
藤井は過去に3回、日本シリーズに出場している。ただし優勝の経験はまだない。昨年は決勝まで進みながら、豊島将之九段(32)に敗れた。
■今回がラストチャンス
羽生は出場2回目の1991年、21歳2カ月で初優勝を飾った。例によって藤井はまったく意識していないだろうが、藤井が羽生の年少記録を抜けるのは、今回がラストチャンス。藤井が抜けなければ、羽生の記録は空前にして絶後のものとなるかもしれない。
羽生は日本シリーズで優勝5回、準優勝5回という実績を残している。最多優勝は谷川浩司十七世名人(60)の6回。羽生が今回優勝すればその記録に並ぶ。トップクラスで依然戦い続ける羽生もまた、いまなお記録を更新し続ける立場にある。
「藤井は羽生以来のタイトル全冠制覇を達成できるのか?」
「羽生はタイトル通算100期を達成できるのか?」
以上は現将棋界における主要なトピックのうちの二つだ。
タイトルの数だけを見れば、戦後の将棋界は大山康晴十五世名人(80期、故人)、中原誠十六世名人(64期、引退、75)、羽生(99期)の3人は特に、時代の覇者として傑出した実績を残している。タイトル戦の数は少しずつ増えていき、時代背景が異なるため、単純な比較はできないが、藤井はそれら王者の系譜につらなる棋士なのは間違いない。