将棋日本シリーズJTプロ公式戦の2回戦で「史上最強」の2人がぶつかる。歴代1位のタイトル99期を獲得した羽生善治九段と、若き王者・藤井聡太五冠だ。両者の軌跡を振り返りながら、将棋界の今を紹介する。AERA2022年9月26日号の記事を紹介する。
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史上最強VS.史上最強候補。
羽生善治九段(51)と藤井聡太竜王(20)の対戦をシンプルに形容すれば、そういうことになるだろう。
かたや歴代1位、タイトル99期を獲得したレジェンド。かたや番勝負で一度も敗退することなく史上最年少でタイトル10期に到達した若き王者。ファンが一番見たいゴールデンカードと言っても過言ではないだろう。
9月23日。札幌市でおこなわれる将棋日本シリーズJTプロ公式戦2回戦において、羽生と藤井は久々に対局する。
■ともに早熟の大天才
日本シリーズに参加できるのは将棋界のトップクラス12人のみ。現在の規定では前回優勝者、タイトル保持者のほか、賞金ランキング上位者だけが出場を許されている。棋戦名の通り全国を転戦し、公開でファンが見守る中、早指しのスリリングな対局がおこなわれる。羽生、藤井の対戦を生で見る機会に恵まれた人は幸運というよりない。
本稿ではその歴史的対局に先立ち、両雄のこれまでの実績・記録を振り返りながら、現在の将棋界の状況を紹介したい。
羽生と藤井には多くの共通点がある。中学生のうちに棋士になった早熟の大天才であること。盤上では華のある指し手でファンを魅了し、勝ってもおごらず謙虚で、飽くなき探究心を持つこと。人柄はほがらかで、将棋界を代表する人気者であること。実績の上では数々の偉大な記録を持ちながら、自らはほとんど無関心なことなどだ。
「記録がかかっている」
などと書いてもそれは本人たちの実感ではなく、外野の視点であろう。しかしわかりやすいよう便宜上、そうした表現を用いて進めていく。