
「女性が描けてない」と怒られた、デビューした頃
編集:早見さんの小説を読んでいると、本当に女性の主人公が本当に生き生きしている。女性読者も共感できるように描かれていると思います。それこそが早見さんの小説の魅力であり、不思議なところでもあるんですが、ご自身ではどうでしょう?
早見:僕がデビューした頃は「女性が描けてない」ってものすごく怒られましたし、実際、僕も女性という人たちを描けてないなって思っていた時期もありました。それは未だに拭えてないんですけどね。
でも、小説家になってデビュー作を書いた時に、このままじゃ行き詰まるだろうなっていう明確な予感があって。その頃から、女性に限らず、人を見る目が劇的に変わっていると思うんですよね。あの時、人を見る目が変わった自分の集大成が今の作品だと思っているので、そういう風に言っていただけると嬉しいです。
でも、「早見さんの作品は女性がすごく良く描けている」って言ってくれるのは、男の人ばかりなんですよ。だから多分、まだ描けてないんだろうなっていう風に思っています。

家族というものは、社会を構成する最小単位
編集:今、集大成って言葉がありましたが、やはり家族というテーマは、早見さんの小説の“通奏低音”になっていると思います。今回の作品を書き上げての感慨を、最後にひと言をいただけますか?
早見:そうですね。やっぱり僕は、一貫して家族というものが、たとえ血の繋がりがあろうとなかろうと、社会を構成する最小単位だと思っているんですよ。国家を論じられるわけではなく、でも、この本当に息苦しい社会をどうにかしなきゃいけないって思った時に、僕の場合、やはり対峙するのは家族っていうテーマが多くなるんですよね。
あんまり言うとネタバレになるんですけど、今まで描いてきた家族像とは、今回はちょっと趣向を変えているんです。それをミステリー的に読んでもらいたいって気持ちは、特にはなかったんですが、自分の中で新しい家族像を描けたと思っています。
決してお受験の話を書きたいと思ったわけではなくて、中学受験という、小学生にとっては手に負えない、大きな壁に一人ではとても立ち向かえない時に、一緒になって立ち上がる家族を描いてみたかった。そんな風に思って書きました。
出来上がってきた見本を読んで、自分でもよく書けているなって思いました。
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