「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さん。「偏差値にとらわれない中学受験相談室」。今回は、中学受験に備えた入塾について悩むお母さんからの相談です。

MENU 目指す学校によって必要な学習量も変わる 塾の価値観に染まらない

安浪:まず、この質問はとても真っ当だと思います。中学受験に限らず、小学校受験でも「個性を生かす」と言いながら、入試ではきっちり枠に当てはめさせるような答案を書かせるなど、制度自体が矛盾していることも多いんですよね。中学受験に関しては12歳でこなす学習量については、私自身も「常軌を逸している」と感じています。勉強が本当に好きな子には向いているかもしれませんが、普通の小学生には正直かなりきつい。しかも、その負担は年々大きくなっている印象です。

矢萩:重要なのは、今の中学受験って「量をこなせば質になる」と無批判に信じて、ひたすらやらせているケースが多いということ。もちろん、ある程度の量は必要です。でも、何でもかんでも全部やる必要があるわけじゃない。子どもによって必要な量も、優先順位も違うはずなのに、同じ宿題を一律に出してしまう。

安浪:私が指導に入った6年生のご家庭では、「先生にすべてお任せします」と言われたので、ご家族と相談して、塾は理科と社会だけにし、算数と国語は家庭教師と個別で見ることにしました。そして指導する内容を塾で課されていた量の半分くらいにしました。正直、その子にとってはいらないことが多すぎたんです。でも普通に塾に通っていると、テストで点を取らないとクラスが上がらない、偏差値が出ない、だから志望校が選べない…というように、どうしても塾のルールに縛られます。そうなると、やる量は一気に増えてしまうんですよね。

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安浪京子
中学受験専門カウンセラー/算数教育家 安浪京子

やすなみ・きょうこ/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は佐藤亮子さんとの共著『中学受験の意義 私たちはこう考えた』(朝日新聞出版)。オンラインサイト「中学受験カフェ」主宰。

矢萩邦彦
中学受験塾塾長 矢萩邦彦

やはぎ・くにひこ/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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