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『ザ・ロイヤルファミリー』『店長がバカすぎて』など数多くの話題作を世に出し続ける早見和真さんが一節対話に登場! 父と娘、そして祖母・母・娘……家族が『中学受験』という大きな課題に立ち向かうさまを描いた最新作『問題。』について、「家族」という深遠なテーマに向き合うことへの思いなどを語ってくださいました。(朝日新聞出版YouTube:一節対話「問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい」より一部抜粋。

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不満だらけだった、子ども時代

担当編集者(以下、編集):この小説は父と娘の物語と、もう一つ、三世代の女性の物語でもあると思います。そこで今回は女性三代の関係性に焦点を当てて、母親が主人公の十和に語り掛ける印象的なシーンを読んでいただきました。

 この場面は、かなり早い段階から構想に入っていたと思うんですが、どういうところから、このような語りかけになったんでしょうか。
 

早見和真さん(以下、早見): まさにここは、物語の核になるワンシーンなんです。

 僕自身、子ども時代に母親から「一体何が不満なんだ」って言われることは多々ありました。当時の僕は不満だらけで、でも、どうせ大人たちに言ってもわかってなんてくれないだろうと思っていたんです。

 そんな僕が大人になって、僕には娘がいるんですけども、その娘に対して「あの時の自分が欲したであろうこと」を教育として施していると思うんですよね。でも娘はちゃんと不満そうな顔しています。

 でも僕は「お前、いったい何が不満なんだよ」とは言ったことはないんです。それ言われるのがすごく腹が立つことだったんで。なので、聞いてはないんですけれども、でもちゃんと不満そうなんですよ。

 僕があの頃欲していたものを彼女に与えているつもりでも、彼女が求めているものはきっと違うんだろう。そんなシーンを象徴的に書きたいなと思ったんです。僕以上に僕の妻が、それを思っていそうですが。

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