立憲・野田代表は「集団的自衛権」行使容認派

 しかし、私から見れば、驚きでもなんでもない。

 なぜなら、多くの人は知らないかもしれないが、集団的自衛権行使容認に道を開いたのは、他の誰でもない、野田氏だからだ。

 そもそも、集団的自衛権については、自民党政権も一貫して「憲法違反」であるという立場を堅持していた。憲法学会でも違憲説は絶対的通説であり、私なども含めて、霞が関の官僚の間でも、これに異論を唱える人はいなかった。

 したがって、集団的自衛権について解釈を変えることによって合憲とすることについては、およそ議論の余地などなかったのである。

 日本国憲法では、首相はもちろん、すべての公務員は憲法を擁護する義務がある(憲法第99条)。従って、憲法上認められないとされていた集団的自衛権を認めるように解釈を変更しようと企図すること自体が憲法違反である。

 ところが、閣議決定で設置された「国家戦略会議」の下におかれた「フロンティア分科会」は、2012年夏の報告書で、「集団的自衛権に関する解釈など旧来の制度慣行を見直すことも検討されるべきである」と提言した。このようなことは、その時の首相の意向に反して行われることはないというのが、永田町・霞が関の常識だ。つまり、解釈改憲の提言は、野田首相(当時)の意思を表したものであった。

 野田氏は、このようにして、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認に日本で初めて道を開いた首相として名を残したわけだ。

 こうした思想を持った野田氏だから、集団的自衛権は違憲だという立憲の党としての立場を心の底では馬鹿にして嘲笑っているだろう。アメリカの意向かどうかを問わず、彼が、安保法制を修正して、集団的自衛権の行使を否定することなどあり得ないと考えるべきである。

 野田氏が代表である限り、共産党が選挙協力に否定的な態度を取るのは極めて正しい。なぜなら、仮に立憲民主党が中心の政権が成立しても、戦争に向かい、アメリカの意向に沿って、集団的自衛権の行使容認は継続し、戦争に向かった軍拡もさらに強化されると考えるのが自然だからだ。

 仮に政権交代しても、「野田首相」の下では、自民党政治と軍事政策が変わることはあり得ないのだ。

 野田氏が「嘘つき」だという話は、裏金問題をめぐる、政治資金改革の議論にも明確に表れている。

 この点は、9月10日配信の本コラム「立憲民主党代表選で見るべきは『政治資金改革』の中身 仮に枝野氏、野田氏になれば『後退』は確実だ」を読んでいただければわかる。

 一言で言えば、野田氏は立憲の公式な政治資金改革で提案された、個人向けを含めた政治資金パーティーの全面禁止を反故にすることを企図している。ただし、非常に巧みな騙しのテクニックを使っているので、ほとんどの人は気づいていないだけだ。

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