今、リベラル系の有識者の間で共通の悩みが語られている。今月27日に投開票が行われる予定の衆議院選挙で石破茂首相攻撃をして自民の大幅議席減少を狙うのか、それとも少し手加減して、自民の大敗を避ける方向に動くべきなのかという、今までになかった悩みである。
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今回はその「悩み」について解説したい。
自民党の総裁は所詮自民議員なのだから、誰がなっても同じ。だから関心を持っても仕方ないという考え方がある。それはそれで真実ではあるのだが、今回の総裁選ばかりは、そんなことを言っていられる状況ではなかった。なぜなら、石破茂元自民党幹事長と高市早苗前経済安全保障相の接戦が予想され、高市氏が自民党総裁になる可能性がかなりあったからだ。
高市氏が総裁選に勝ち、日本の首相になることの恐ろしさについては、9月21日配信の本コラム「高市早苗氏の恐るべき“居直り体質”と“軍拡主義” もし首相になったら『日本は終わる』」で解説したとおりだが、一言で言えば、安倍晋三元首相の地に落ちた倫理観を受け継ぎ金権嘘つき政治が蔓延するとともに、戦争を前提とした超右翼的軍拡政治が無限定に推進されるリスクがあったのだ。
したがって、リベラル系の人のみならずまともな人々は、高市氏だけは避けて欲しいという切実な気持ちになった。
総裁選では、2回目の投票で、石破氏の大逆転勝利となったので、アンチ高市氏の人たちは、心の底から「良かった!」と安堵した。
そもそも、石破氏が選ばれた最大の理由は、国民人気が高く単に自民支持層や無党派の保守層だけでなく、無党派の反自民・リベラル層や立憲民主党や共産党の支持者にまで支持する人がいるということだった。裏金問題などで地に落ちた国民の信頼を保守層からリベラル層まで幅広く回復するための切り札になるのではという期待があったからこそ、石破嫌いの議員まで、ここは選挙のために石破氏に投票しようということになったのだ。
しかし、その期待は、あっという間に裏切られることになった。
石破氏が新首相になってみると、党役員や閣僚人事において、防衛相経験者の重用が目立ち、また、アジア版NATO構想など、「立憲支持層から見れば」驚くほど「危険な」政策構想を持つことが明らかになった。
さらに、衆参の予算委員会の審議を経て国民に判断材料を提供してから衆議院を解散すると言っていたはずの石破氏は、首相就任前に、解散を予算委員会開催をせずに行うと表明した。立憲支持層などに「この人はとんでもない嘘つきなのではないか」という疑念が広まり、「人柄が信頼できる」という石破人気の基礎が音を立てて崩れかねない事態となっている。