石破氏への「嘘つき」「敵前逃亡」という批判
こうした事態を見れば、立憲支持者を含め反自民層は、アンチ安倍晋三のシンボルだった石破氏といえども、所詮は自民党議員だから、高市氏が首相にならなかったのは良かったが、ここから先は、反自民で戦い、政権交代を実現するのが最も重要な課題だということになりそうである。その意味では、立憲にとっては、陣営をまとめる良い材料を石破氏が提供してくれたと言えるかもしれない。
一方、立憲では、9月23日に野田佳彦元首相が泉健太前代表や枝野幸男元官房長官などを破って新代表に就任した。世論調査などでも野田氏に期待するという回答が比較的高い数字で出ている。裏金問題などで自民に強い逆風が吹く中で、立憲は何もしなくても支持率が上がるという期待をする向きもある。
仮に総裁選での20人の推薦人のうち13人が裏金議員という「高市首相」が相手の総選挙になっていれば、当然、高市氏の極右的言動とともに格好の攻撃材料となり、立憲への追い風になるはずだった。
ところが、石破氏が首相になって、早期解散総選挙に持ち込まれれば、石破氏の国民人気により、無党派層やリベラル層まで支持が広がり、当初期待していたほど簡単に立憲の議席増につなげられないかもしれない恐れがあるという見立てもあった。
結果的には、そうした心配が杞憂に終わり、裏金や旧統一教会問題の追及に加え、石破氏のおかげで、解散総選挙時期に関する「嘘つき」「敵前逃亡」という攻撃材料が増えたという状況だ。
一方、立憲支持者の中には、野田新代表が、石破氏以上に「危険な右翼」であり、また石破氏とは比較にならない「厚顔無恥な嘘つき」であると考えている人たちが多数いる。
どういうことか。
野田氏は、代表選の議論やその後の記者会見などで、集団的自衛権の行使を認めるいわゆる安保法制には違憲部分があるという立憲の公式の立場を踏襲すると述べた。しかし、その一方で、アメリカとの関係もあるので、直ちにその廃止をすることはしないという立場を明らかにしている。
もちろん、法律の改廃には、それなりの時間はかかるが、それは、日本の国会との関係であって、アメリカとの関係ではない。仮に、アメリカが怒るから違憲の法律を変えられないということになれば、憲法よりもアメリカの意向が優先されるという由々しき事態になる。これは立憲主義の否定だから、そんな党の代表がいること自体が「立憲」民主党の自己矛盾であり、どう考えても許されない「厚顔無恥な嘘つき」そのものではないかと驚くかもしれない。