更年期、女性にはどのような心身の変化があるのか。長年、婦人科医と「女性ホルモン塾」を開いてきた吉川千明さんと、フェムテックに詳しい北原みのりさんが語り合った。AERA 2024年10月7日号より。
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北原みのり:千明さんが(婦人科医の)対馬ルリ子先生と「女性ホルモン塾」を開いたのは、もう20年以上前になるんですね。そのころだと世間的にも、女性ホルモンのことは、今ほど理解されていませんでしたよね。
吉川千明:そう。私も自分が知らないことを教わって、これは大変、みんなに知らせなきゃ、と思って始めたの。もう180回を超えたんですけど、今でもホルモンについてはあまりに知らない人が多いし、一番大事なことが伝わってないように思う。
北原:今、私は更年期真っただ中。腟(ちつ)は乾くし、気持ちは落ち込むし、改めて女性ホルモンの大切さを実感しています。自分にあったホルモン補充療法(HRT)は数年前から受けていますが、知識のないまま、この世代を生きぬくのは、オールを持たないで船を漕(こ)いでいるようなものだなと実感してます。
急な変化追いつけない
吉川:女性ホルモンって粘膜、肌、骨、関節、筋肉、免疫、自律神経と、体から心まで全部に関わっているから。更年期は、この全身を守ってくれている女性ホルモンが急激に落ちるので、体はこの急な変化に追いつけない。だからすごく苦しい。そこに親の介護や仕事がかぶり、今だと高齢出産の人も多いから、子育ての一番大変な時期も重なる。会社で男の人と競争するのは無理。だからキャリアをあきらめ、競争からおりてしまう。
北原:私は仕事を通して、女性の性や身体の話をたくさん聴いてきましたが、女性は本当に我慢していますよね。そもそもつらいことすら気が付かない人もいる。我慢が当たり前の身体になってしまっているんです。自分の母親は更年期で何もしてなかったからとか、生理不順や、これまでにない性交痛などを感じていても、それが更年期と結びつかなかったり。日本ではまだ更年期にHRTを受ける人は少ないですよね?