吉川:どうあれ、更年期には、女性ホルモンが関係してくるので、婦人科とその他の科が連携すれば最高と思います。そのときに重要なのは、医者の質だと思うんだけど、日本は低用量ピルの解禁も1999年と世界に比べると本当に遅かったし、女性に対する理解が低い。婦人科の先生も出産や婦人科系の病気の治療が主体で、年輩(ねんぱい)の医者ならそもそも更年期やPMS(月経前症候群)と、ホルモンの影響による不調に対する勉強をしてない人も多いんですよ。女性をきちんと診ることができる先生が少ないと思う。
北原:性差医療がこれからは重要ですよね。たとえば日本の40代、50代の医療ってメタボや糖尿病、高血圧などに多くの予算がつけられている。でもこれって、男性の生活習慣病なんですよね。女性ももちろん太るし、糖尿病にも高血圧にもなるんですが、それは女性ホルモンによることが多いから、男性とは原因が違う。治療に対するアプローチが違って当然なのに、そうした女の人たちに対する予算がつけられていないんです。
大きな病気の窓口にも
吉川:男性にとってメタボが危険なように、女性にとって更年期の不調は、大きな病気への窓口になったり、うつになったり、会社をやめたり、それが原因で自殺したり。同じように「死」につながるわけで、女性の更年期に予算をつけないと日本は沈没する。更年期をきちんと過ごせれば、仕事は続けられるし、社会の担い手を減らさなくてすむ。男も女も関係なく、女性の更年期は社会の問題なんです。
北原:GSM(閉経関連尿路性器症候群)が、ここ数年でようやく語られるようになりました。ホットフラッシュとかめまいといった症状だけでなく、性交痛や不正出血、腟や外陰部の乾燥やかゆみ、頻尿や尿漏れなど、排尿や腟周りの困りごとが、更年期世代のリアルな悩みだと思います。先日、80代の女性が「腟から血が出るんです」と私のお店に来てくれました。更年期の時に何も術がなく、高齢になって乾いて血が出ても病院では「年だから」と相手にしてくれなかったそうです。腟が健康であるというのは、女性たちが質の高い生活を送るためにとても大事なんですけど、「病気じゃない」と軽く考えられている。
(構成/編集部・大川恵実)
※AERA 2024年10月7日号より抜粋