女子やり投げで金メダルを獲得した北口榛花(中央)
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 現地7月26日に開会式が行われたパリ五輪は、連日にわたって熱戦が繰り広げられ、歓喜と興奮、あるいは落胆や無念など、様々な感情が混じり合いながら閉会式を迎えた。そしてその中で選手たちは人々の心に残る「言葉」を多く発していた。その一部を紹介しながら大会を振り返りたい。

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 日本人にとっての今大会最初の衝撃は、柔道女子52キロ級の阿部詩の2回戦敗退だった。相手も世界ランキング1位のディヨラ・ケルディヨロワであり、決して油断だけではなかっただろうが、試合直後の号泣する世界王者の姿に観客からの“UTAコール”が飛んだ。この情景は賛否両論ありながら大きな注目を集めた。その直後、同じ日、同じ会場で試合に臨んだ兄の阿部一二三が、妹が見つめる中で見事に金メダルを獲得して五輪連覇を達成した。その直後のインタビュー。兄・一二三は、「苦しい1日だったけど、妹の分まで、やっぱり兄が頑張らないと、という気持ちで頑張りました」と涙を堪えながら語り、誇らしげに胸を張った。

 レース後に悔しい思いを吐露したのは、競泳の池江璃花子だった。2018年のアジア大会では日本勢としては史上初の6冠に輝いた後、白血病を乗り越えて東京五輪に出場。そして迎えた今大会は、100mバタフライで2大会ぶりの個人種目に出場したが、決勝進出ならず。直後のインタビューでは、冒頭15秒の無言の後に「今のレースは正直、頑張ってきた分だけ無駄だったのかなと、そんなレースでした」と言葉を絞り出した。その言葉にSNS上には「そんなことはない」「あなたは立派だった」など、多くの励ましの声。そして池江本人も「また4年後リベンジしに帰ってきたいと思います」と涙を拭った。

 男子体操ではパリの舞台で晴れやかなコメントが話題となった。個人総合で20歳の岡慎之助が見事に金メダルを獲得し、さらに団体、種目別鉄棒でも金、平行棒で銅と計4つのメダルを手にした。そして4つのメダルを首にかけてテレビ出演した際、「首がめちゃくちゃしんどいです」と天真爛漫なキャラクターで周囲を和ませた。その一方で五輪連覇を目指した橋本大輝は個人総合で6位。競技直後、「(東京五輪からの3年間は)しんどかったなと」と振り帰るとともに、後輩の活躍を前に「団体の金メダルだけでお腹いっぱい。悔しい気持ちより、幸せすぎて涙が出ちゃって。悔いの残らない大会でした」と語り、ファンの胸を打った。

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