党員票よりも地方票

 その記事と重複するので簡単におさらいだけしておくと、自民党総裁選では、1回目の投票で、国会議員と一般の党員・党友の票の割合が1:1になっているため、4人以上の候補が出るのが常態化している今日、国民の圧倒的人気を得ている政治家でも、国会議員に嫌われれば、当選に必要な過半数の票を獲得するのは不可能に近いのが現実だ。

 そして、1位と2位の候補の間で行われる決選投票では、国会議員票(1人1票で現在は合計369票)が、党員票(各都道府県ごとに1票として集計され合計47票)の約8倍もあるので、地方票(党員の意見はほとんど考慮されずに議員の内輪の談合で決まってしまう。

 2012年の総裁選で、党員票で圧倒的にリードしていた石破茂元幹事長が決選投票で安倍晋三元首相に敗北したのも、国会議員票で負けたことが原因だった。また、前回総裁選でも、河野氏は、党員・党友票では当選した岸田文雄首相を上回ったが、国会議員票で差をつけられて1回目の投票も決選投票でも勝てなかったということが起きている。

 さらに、総裁選の仕組みにはもう一つ問題がある。多くの候補が乱立する場合、国会議員20人以上の推薦人を必要とする規則が、立候補そのもののハードルを上げていることだ。

 現在も、石破氏ほどの高い国民的支持を得ている政治家でさえ、推薦人集めに苦労している姿は、その象徴と言って良いだろう。

 この問題については、石破氏自身、「党を支えているのは地域だ。総裁の決め方も党員票の比重が上がっていいのではないか」「党員が良いと思った人が国会議員票で覆されるのは良いことだとは思わない」などと述べて、総裁選の規則の問題点を強く指摘している。

 しかし、自民党内で、この規則を変えようという動きはほとんど見えない。

 それどころか、いかにして自分のための推薦人を集めるか、いかにして石破氏の推薦人集めを妨害するかという戦いに明け暮れているのだ。

 自民党のこうした現状を見ると、この政党は完全に国民の信頼を失うだろうという思いをますます強くする。

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民の声は届かない、政党の代表選挙の構造