古賀茂明氏
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 7月31日、「河野太郎デジタル相が脱原発を修正」というニュースが流れた。

【写真】総裁選に先走る動きに苦言を呈したのはこの人

 報道によれば、AIデータセンターが急増することなどに伴う電力需要の増大に対応するためには原発を含めたあらゆる電源を活用する必要があるという理由で、これまで「脱原発派」だと見られていた河野氏が、原発活用を容認する路線に舵を切ったということだ。

 脱原発を支持する人々の一部は、河野氏が安倍内閣で閣僚に登用されて以来、原発のことを聞かれても、担当外だとして脱原発の姿勢を示すことがなくなったことや、2021年の前回の自民党総裁選挙での出馬会見で「安全が確認された原発を当面は再稼働していく」と発言したことをとらえて、「河野太郎は変節した」と批判していた。

 彼らから見ると、「ほらみろ。やっぱりそうだった。彼は裏切り者だ」ということになる。

 一方、脱原発派の中には、それでも、彼の再生可能エネルギー推進の姿勢などを見て、「河野太郎は、本当は脱原発なのだが、総理を狙うために今はそれを隠しているだけだ」と見ている人たちもいた。筆者もその一人だ。

 リベラル系の脱原発派の人たちからは、「古賀さんは、河野太郎に騙されている」「古賀さんは河野太郎に甘い。そんな人は信用できない」などと面と向かって言われたこともある。

 今回のニュースを見れば、これまで、河野氏の脱原発を信じたいと思っていた人から見ても、「彼は変節した」ということになりそうだ。私の周囲にもそういう人はたくさんいる。

 私も正直言って驚いた。ここまで言うのかなという感じだ。ただし、発言全体を見ていないので、変節したと言い切る自信はない。産経新聞も「今回の河野氏の発言は、これまでの域を出ず、中途半端との批判も出る可能性はある」という留保をつけている。 

 今回この話を取り上げるのは、「河野太郎が変節したかどうか」を論じるためではない。

 変節したとすればそれはなぜなのか、あるいは変節していないにもかかわらず変節したと見られる発言をしたのだとしたら、それはなぜなのかということを考えるためだ。

 「変節したことをまだ認めないのか」「逃げるのか」というご批判はよく理解できるが、この話はとても大事な話なので、まずは最後まで読んでいただきたい。

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選挙で「政策論」よりも重要視するのは