「オス 5歳」「メス 1日目」。年齢も生育環境も異なるネコたちの顔のアップだけがひたすら並ぶユニークな写真展「ねこがお」(キヤノンオープンギャラリー2で7月23日まで開催) 展示写真すべて ⓒMitsuaki Iwago、photo 佐藤創紀(写真映像部)

ネコの顔にも歴史あり?

 とは言うものの、岩合さんと言えばネコ、という印象が強い方は多いだろう。16歳のときに初めて撮影して以来、もはやライフワークとなっているネコ。その顔だけを切り取った写真展「ねこがお」も同時開催されている。撮ってみようと考えたきっかけは、写真コンテストだ。

「顔だけを撮った応募写真がすごく多いんですよ。それに対していつも、ネコって顔だけじゃないんですよ、ってお話しするんです。僕は、ネコの動きやからだ全体を見て、光だとかいろんなことを考えながら近寄っていく。顔だけではそのネコ、その個体を表すことができないのは、ヒトと同じだと思うんです。でも、ヒトの顔に歴史あり、っていうように、ネコにも顔で語るものもあるなと思って(笑)」

 大きな傷に厳しい目つきのオスから、あどけないメスの子ネコまで、年齢も育った環境も異なる顔だけが並び、たしかに、その表情から想像する人生ならぬ“ネコ生”は非常に楽しい。

「ネコは動きが面白いので、本当は、手だとか尻尾だとか、もっといろんなところから撮っていかなきゃいけないなって思うんですけど、スチールだとね、尻尾だけでそのネコが表わせるかっていうとなかなか難しいから(笑)」

 アップで並ぶ顔のなかには、岩合さんの愛、タマ(玉三郎)とトモ(智太郎)や、「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK BSP4K・NHK BS)で見たことのある顔もまじっているので、ファンのみなさんは探してみるといいだろう。

写真展「ねこがお」(キヤノンオープンギャラリー2で7月23日まで開催)には、岩合さんの愛猫、タマ(玉三郎)とトモ(智太郎)や、「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK)で見覚えのある顔も 展示写真すべて ⓒMitsuaki Iwago、photo 佐藤創紀(写真映像部)

すべてが美味しい “レストラン岩合”

 3会場での3展同時開催は、50年を超えるキヤノンギャラリーの歴史で初。しかも、「キヤノンギャラリーSでの展示は、写真家人生で一度だけ」と決まっているというから、見逃す手はない。

 会場には、岩合さん自身が展示に合わせて選んだという曲も流れている。「Masai Mara」では、ポール・サイモンの「Under African Skies」と「Homeless」、オープンギャラリーでは、写真展のタイトルにもなっているルイ・アームストロングの「What a Wonderful World」。目だけでなく、耳も使って感じてほしい。

 それぞれに味わいの異なる、三つの写真展。どの作品も素晴らしく甲乙つけがたいのだが、ご自身が気に入っている一枚を強いて挙げるなら?と尋ねると、岩合さんはにっこりと笑った。「すべて美味しい、写真のレストランなので。ぜひすべての料理を楽しんでください」(編集部 伏見美雪)

※AERA 2024年7月29日号より先行配信

岩合光昭写真展3展同時開催中。~7月30日、キヤノンギャラリー S 「Masai Mara」、~23日、キヤノンオープンギャラリー1「What a Wonderful World -この素晴らしき世界-」、・キヤノンオープンギャラリー2「ねこがお」(すべて東京・品川、入場無料)
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