このため円安シナリオが崩れ、仮に円高・ドル安に転換すれば、株式市場も転換点を迎える可能性が高いという。中西さんは言う。
「原油価格や資源価格など国際商品市況が大きく変動しないことを前提とすれば、円高・ドル安へのトレンドの転換が確認できたら、株式市場の物色の矛先は変わるでしょう。それまで円安が追い風となってきた輸出関連銘柄から、円安による輸入物価の上昇が逆風だった内需関連株へとお金が流れるようになる。分かりやすく言えば『トヨタ売り・東京電力買い』といったところです。輸出関連銘柄には値がさの大型株が多い。これに対し、内需関連は低位株や中小型株が中心です。値がさ株の動きに左右されやすい日経平均株価の上値は抑えられてしまう恐れがあります」
内需関連銘柄だって安心はできない。円安も支えとなってきたインバウンド(訪日客)需要が変調をきたす可能性もあるためだ。外食やホテルといった観光需要が冷や水を浴びせられれば国内の消費にも影響が出る。
株式市場に激震が走る
加えて現在、中西さんが心配しているのが国内の政治の動向だ。新聞各社が行った4月の世論調査では岸田内閣の支持率は20%台で、低迷が続いている。自民党派閥の政治資金パーティを巡る裏金問題が尾を引き、今国会での政治資金規正法改正を目指す取り組みも国民からほとんど評価されていない。
「岸田文雄首相は、このままでは9月の自民党総裁選で再選するのも危うい状況です。再選の可能性が低いのだったら、起死回生を図るため衆院解散、総選挙に打って出ようと考えるかもしれません。でも今のような状況で総選挙をやったら、与党の議席は大幅に減りかねない。強引に仕かけたら、政治資金規正法の改正を巡ってすき間風が吹く自民と公明両党が連立を解消するリスクだってあります。さらに立憲民主党や日本維新の会など野党が協力し、政権交代が実現するようなことがあれば株式市場には激震が走るでしょう」(中西さん)