私はアンチエイジングクリニックを開設する以前、大学病院の救急救命センターで救急医として最前線に立っていました。毎日運ばれてくる心筋梗塞、脳梗塞、重症呼吸不全など、食べられない状況が長く続く重症患者さんに対して、アミノ酸、ビタミンなどの必要量を細かく計算してフォローする栄養管理をしていたのですが、救急で運ばれるような患者さんを多く見ていて感じたのは「今まで大丈夫だったのだから、明日も大丈夫」という、健康を過信するような面がどこかにあったのではないかという思いです。仕事などでバリバリ活躍する代わりに健康管理はそっちのけで、「毎日必死になって働いているのだから、好きなものを好きなだけ食べたい」「美味しく飲んで食べてストレスを発散したい」と美食、大酒を飲む生活を続けていては、栄養状態が偏り、その先には生活習慣病、もっと先には救急で運ばれるような命の危険が待っています。

 しかし、突然、心筋梗塞や脳梗塞で倒れるように見えても、その前に人間の体は必ず警告を出すはずです。そうなる前にせめて健康診断や検診をきちんと受けてチェックさえしていれば、最悪の事態は避けられる可能性が高いのです。

 健康とは当たり前の状態ではありません。日々の生活習慣を積み重ねた結果得られる貴重なものです。私は、今の自己管理が10年先の健康状態を決めると思っています。住宅のメンテナンスに例えれば、小さな雨漏りや不具合のうちに早めに修復すれば何年も住み続けることができますが、放置すればやがて家の柱が腐って倒壊してしまうような事態になりかねません。人間の体も同様に、定期的な点検を怠らず、不具合があれば早めに対処するということが重要です。

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