プロ野球日本シリーズ第7戦、オリックス―阪神。横田慎太郎さんのユニホームを手に、胴上げされる阪神の岩崎優=2023年11月5日、京セラドーム大阪

 国内外ともに激動の一年だった2023年。この年を象徴する「戦争」「野球」「酷暑」「将棋」「芸能」の5テーマで、五つのジャンルから、そのジャンルに精通する選者にお薦めの本を選書してもらった。AERA 2024年1月1-8日合併号より。

【図】ジャンルとテーマを参考に読みたい一冊を

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 2023年は、国内外ともに激動の一年だった。

 2月でロシアのウクライナ侵攻から1年となり、10月にはパレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突が勃発。世界中で反戦の声があがるも、戦況は混迷を深める一方だ。

「観測史上最も暑い夏」と言われたこの夏。気候危機が待ったなしであることを実感した。市街地周辺へのの出没も多発したが、これも気候変動の影響で従来の生息地でエサを確保しづらくなっている背景があるとも言われている。

 23年は野球人気が再燃した年としても記憶されそうだ。3月のWBCでの日本代表優勝、夏の甲子園での慶應義塾高校優勝、そしてNPBでは阪神タイガースが38年ぶりに日本一に輝いた。

 将棋の世界では藤井聡太八冠が誕生。一方、芸能界では旧ジャニーズ事務所性加害問題など、長年隠蔽されていた問題が次々と明るみに出た。

毎日に密接に関連

「評論・人文社会」の本を選書してくれたのは、会社の枠を超えた3人の人文書の編集者が集まった「困ってる人文編集者の会」。「本のまわりの困りごと」をテーマに同人誌を発行するなどの活動をしている。

「サイエンス・テクノロジー」分野は、1981年創刊の科学雑誌「Newton」の編集部長、板倉龍さん。

「最初は『これは難しいぞ……』と戸惑いました(笑)。ですが不思議なことに考えはじめてみると、本のリストが割とすぐに浮かんできました。サイエンスとテクノロジーが私たちの毎日に密接に関連していることを改めて感じました」(板倉さん)

 2021年に、同誌でSFからコミック、子ども向けの科学絵本まで幅広く紹介した「科学の名著」を特集したところ大きな反響があった。「Newton」24年2月号(12月26日発売)では2年ぶりに「科学の名著」を特集するとのこと。

「ノンフィクション」を選書してくれたのはスローニュース代表取締役の瀬尾傑さん。スローニュースは「調査報道の新しいエコシステム」をつくるという目的で、外部のジャーナリストやメディアとの協力のもと、独自の調査報道コンテンツ配信や有料会員制コミュニティーの運営をしている。23年はスローニュース発の『黒い海』(伊澤理江著)が大宅壮一ノンフィクション賞、講談社本田靖春ノンフィクション賞などを受賞して話題になった。(編集部・小柳暁子)

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