文芸・エッセイ

阪神ファンの愛と狂気 安吾が書く木村名人

文筆家、元書店員・大塚真祐子さん/2022年から毎日新聞文芸時評欄担当、朝日出版社、港の人HPでエッセイ連載中

【戦争】『朝、目覚めると、戦争が始まっていました』/方丈社編集部/方丈社/2018年

昭和16(1941)年12月8日午前7時、ラジオの臨時ニュースが開戦を告げる。そのときを著名人たちはどのように過ごしていたか。淡々とした所見の数々に、戦争がつねに今日と地続きであることを痛感する。

【野球】『野球短歌』/池松舞/ナナロク社/2023年

阪神ファンの作者が、2022年シーズンの阪神タイガース全試合を短歌で詠んだ、愛と狂気にあふれた歌集。38年ぶりの日本一達成は、313首の短歌にこめられた著者の情熱によるものではないか、と本気で思う。

【酷暑】『大いなる錯乱』/アミタヴ・ゴーシュ/以文社/2022年

「エコクリティシズム」という単語をよく見るようになった。『ガラスの宮殿』などで知られるインド出身の作家は、気候変動の問題において、文学的想像力がもつ可能性をあらゆる角度から語る。刺激的なエッセイ。

将棋】『勝負師 将棋・囲碁作品集』/坂口安吾/中公文庫/2018年

無頼派作家・坂口安吾は将棋の観戦記やエッセイを多数残した。巻頭に収録された「散る日本」は、絶対名人木村義雄の敗北の姿をとおして、戦後間もない日本の思想的貧困、政治の堕落を鮮やかに浮きぼりにする名篇。

【芸能】『##NAME##』/児玉雨子/河出書房新社/2023年

性被害、ハラスメント、忖度など、芸能の世界における常態化した歪みが、ひたすら露わになる一年だった。かつてジュニアアイドルとして活動していた女性の葛藤を、鋭く描いた本作は、2023年を象徴する一冊といえる。

評論・人文社会

ガザで生きる人々 トラウマに関する一冊

編集者・困ってる人文編集者の会/編集者の麻田江里子、柴山浩紀、竹田純が会員。Xや同人誌で仕事の悩みを打ち明け合っている

【戦争】『ガザに地下鉄が走る日』/岡真理/みすず書房/2018年

パレスチナに関わり続けてきた研究者によるエッセイ。「現代の強制収容所」といわれるガザで繰り返されてきた大量殺戮の歴史、そして懸命に生きる人々との交流を静謐な筆致で綴る。私たちに何ができるか考えずにはいられない。

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