テクノロジーの進化によってめまぐるしく変化していく社会の中では、キャリアをどのように描いていけばいいのか。2025年2月12日に「テクノロジーの進化が導く自分らしいキャリア」をテーマに、都立東久留米総合高等学校で「AERA特別授業」が開催されました。総合学院テクノスカレッジの全面協力のもと、テクノスのキャリアメソッド「卒後ビジョン」に沿って、生徒たちが自身の“5年後のありたい姿”を思い描きました。

テクノロジーとキャリアの関係を考えるセッション

 授業の前半は、ゲストのライフイズテック株式会社・讃井康智さん、総合学院テクノスカレッジの教員・土方恵美さん、総合学院テクノスカレッジの学生・津志田奈実さんと、ファシリテーターのAERA編集長・木村恵子の4人でトークセッションが行われました。体育館に集まった東久留米総合高等学校の1年生たちは、それぞれの話にうなずいたり、しきりにメモをとったりする姿が見られました。

登壇者の話に聞き入る東久留米総合高等学校の生徒たち。同校の学びは、「25歳の自分創り」をコンセプトに、入学から10年後にあたる25歳に焦点を当て、卒業後のキャリアも視野に入れた教育を行っている

“絶対当たる未来予測”とは?

ライフイズテック株式会社 讃井康智さん/取締役CEAIO(最高AI教育責任者)。中高生を中心にIT・プログラミングの教育事業を展開。「AI・IT・プログラミングキャンプ」などを主宰するほか、中高での学習教材も広く提供している

「未来の社会について、“絶対当たる未来予測”があります。まずは“人口減少社会の到来”、次に“テクノロジーの進化”、もう一つが“価値観の変化”です。今ではスマホのない社会が想像できないように、テクノロジーの進化は今後も避けて通れません。いわゆる“IT企業”だけでなく、どんな仕事でも、ITを使って課題解決することが求められるようになるでしょう」

 トークセッションの「未来の社会はどう変化するか?」という問いに、ライフイズテック株式会社の讃井さんは、人口や経済など、日本の現状のデータをもとに分析します。

「また、“一つの企業を勤め上げれば一生安泰”という古くからの価値観も、すでに失われつつあります。これからは、一人ひとりが“これを大事にしたい”という思いを持って、個々の夢を実現するという風潮が、さらに加速するはずです」

自分に合った進路を選ぶ方法

 讃井さんの「自分は何をしたいか、を考えることが重要」という話を受けて、テクノスカレッジの土方さんは、進路選択のための試みとして、同学の卒後ビジョンを紹介しました。

総合学院テクノスカレッジ 土方恵美さん/エンタメ・クリエイター・こども・スポーツ・教育領域 部長。テクノスカレッジは、エンタメ・クリエイター系、スポーツ・教育、工学・情報などの分野を学ぶ東京工学院専門学校、エアライン、語学、ホテル、ブライダル、観光分野などを学ぶ東京エアトラベル・ホテル専門学校で構成され、ワンキャンパスに全30学科82コースを展開する

「『卒後ビジョン』とは、自分の好き・興味・関心を起点に、未来の社会変化を想像し、学校を卒業した5年後、自分がどのようにキャリアを築いていきたいか “ありたい姿”を考えるものです。テクノスの学生は全員が自分だけの卒後ビジョンを持っていて、それを指針として学びの計画を立てています」

 卒後ビジョンは、興味関心が変わるごとに内容を書き換えたり、仲間や学外の人と共有してアドバイスをもらったりして、ブラッシュアップしていくこともポイントだといいます。

「社会の変化についても、自分で調べたりするだけでなく、経験を通じて体感することが重要です。本学の場合は、他学科および海外の学生や企業の方との協同、地域プロジェクトへの参加等を通じて、自分のキャリアについて多角的に考えられるような機会を多数設けています」

「推し」はAIを超える!

 テクノスカレッジ1年生の津志田さんは、自身の卒後ビジョンを紹介。 “「IT×教育」で次世代の日本を育てる”ことを目指しているとのことです。

「私はもともと教員志望でしたが、最近の教育現場にITの技術が加速度的に入ってくる様子を目の当たりにして、ITの力を使って、よりよい教育現場をつくりたいと考えるようになりました」

 出身である熊本県など地方と、東京など都市部の教育における地域格差も、ITの力を使ってなくしていきたい、と夢を語りました。

総合学院テクノスカレッジ 津志田奈実さん/大学コース※(産業能率大学を選択) 情報システム科 1年生
※テクノスカレッジの専門課程と同時に、大学の通信課程を履修し卒業時に学士を取得することができる制度。大学は5大学から選択可能

「これからは、みんなが“解決したい課題を解決する時代”です」と、讃井さん。そして、そのために特に必要なのが、津志田さんのように「課題を自ら設定できる力」だと言います。

「生成AIの進化によって、多くの作業をAIに任せられるようになりました。ただし、“好き”や“推し”について抱く熱い思いそのものは、AIにはありません。問いを立て、解決のアクションまでの道筋をつくることも、AIにはまだできないことです。好きなアイドルを推す、地域を盛り上げる、何でもいいので、自分なりの“課題”を見つけてみてください」

AERA編集長 木村恵子

「好き」×「テクノロジー」で未来を描く

 授業の後半では、テクノスカレッジの卒後ビジョンに基づいた「MY VISIONシート」を使い、ワークショップを実施。生徒たちは各々の「MY VISION」を記入し、グループで発表や意見交換を行いました。

 その最中には、トークセッションの登壇者や、テクノスカレッジの学生たちも、グループの輪に加わって、アドバイスをしたり、相談を受けたりする場面も。あちこちで拍手や笑い声が上がり、盛り上がっていました。

卒後ビジョンの考え方に沿って構成された「MY VISIONシート」。今回は “テクノロジーの進化”をテーマに、生徒が今後の社会の変化を想像。今の自分の「好きなこと」と組み合わせると、将来どのようなことが実現できるかを考え、未来の“ありたい姿”を思い描いた
学校オリジナルパーカーを着たテクノスカレッジの学生たちが、卒後ビジョンに取り組んだ経験をもとに高校生へアドバイス

「MY VISION」を胸に一歩踏み出す!

 その後、各クラスから一人ずつ選ばれた代表生徒によって、個性豊かなMY VISIONが発表されました。生徒たちと共に、編集長の木村とトークセッションの登壇者3人も耳を傾け、代表生徒それぞれに大きな声援と拍手を送りました。

生徒たちがMY VISIONを発表。仲間と共有して異なる視点を知ったり、刺激を受けたりすることも大事なポイント

 授業の締めくくりには、トークセッションの登壇者4人による講評が行われました。生徒たちの熱意あふれるMY VISIONに刺激され、こちらも熱を感じられるコメントとなりました。

自分の「好き」がキャリアにつながることを実感

 授業の後、参加生徒からは、「将来の夢について考える時間が楽しかった」「話し合いが刺激になった」などといった感想のほか、登壇者からのアドバイスが励みになったという声も。

「自分が好きなアニメが、将来すごく価値あるものになると聞きました。絵を描くのが苦手でも、プログラミングやCGでアニメに携われると言われたので、それも視野に入れて、高校時代はしっかりと学びたいです」

 卒後ビジョンをもとにした授業は、各生徒にとって、自分の「好き」が未来につながることを実感し、より具体的な実現方法を考えるための、大きなきっかけになったようです。

※木村恵子AERA編集長の肩書は、取材当時のものです