イエス・キリストの弟子ペトロは、イエスがローマの兵士たちに捕らえられた途端、他の使徒たちといっしょに全速力で逃亡した。のちに死から復活したイエスから後進の指導を託され、別人のように毅然としたリーダーとなった。皇帝ネロが彼を処刑しようとした際、イエス・キリストと遭遇。自分が殉教する時期が来たことを確信し、ローマへ戻りマニアックな磔刑によって殉教した。清涼院流水氏の新著『どろどろの聖人伝』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し、マニアックな磔刑を望んだカリスマ聖人を紹介する。
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兄弟アンデレに続いてイエスの弟子となったペトロは、同時期に弟子入りした大ヤコブとヨハネの兄弟とともに、常に師の活動につき従いました。ペトロが使徒たちのリーダーとなり、のちに、初代ローマ教皇と見なされるようになったのは、十字架に磔にされる前のイエスから直接、キリスト教会を託されたのが彼だったからです。
ペトロの本名はシモンですが、彼が弟子入りしてすぐに、イエスは彼に「岩」を意味する「ペトロ」という名前を与えました。ある時、イエスは弟子たちに「あなたは、わたしをだれだと思う?」と尋ねました。それにペトロが「イエス様、あなたは生ける神の子、救世主です」と答えると、イエスは彼にうなずきました。