ヴァチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂(Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 イエス・キリストの弟子ペトロは、イエスがローマの兵士たちに捕らえられた途端、他の使徒たちといっしょに全速力で逃亡した。のちに死から復活したイエスから後進の指導を託され、別人のように毅然としたリーダーとなった。皇帝ネロが彼を処刑しようとした際、イエス・キリストと遭遇。自分が殉教する時期が来たことを確信し、ローマへ戻りマニアックな磔刑によって殉教した。清涼院流水氏の新著『どろどろの聖人伝』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し、マニアックな磔刑を望んだカリスマ聖人を紹介する。

【写真】現在のローマ教皇はこちら

*  *  * 

 兄弟アンデレに続いてイエスの弟子となったペトロは、同時期に弟子入りした大ヤコブとヨハネの兄弟とともに、常に師の活動につき従いました。ペトロが使徒たちのリーダーとなり、のちに、初代ローマ教皇と見なされるようになったのは、十字架に磔にされる前のイエスから直接、キリスト教会を託されたのが彼だったからです。

 ペトロの本名はシモンですが、彼が弟子入りしてすぐに、イエスは彼に「岩」を意味する「ペトロ」という名前を与えました。ある時、イエスは弟子たちに「あなたは、わたしをだれだと思う?」と尋ねました。それにペトロが「イエス様、あなたは生ける神の子、救世主です」と答えると、イエスは彼にうなずきました。

著者プロフィールを見る
清涼院流水

清涼院流水

清涼院流水(せいりょういん・りゅうすい) 1974年、兵庫県生まれ。作家。英訳者。「The BBB(作家の英語圏進出プロジェクト)」編集長。京都大学在学中、『コズミック』(講談社)で第2回メフィスト賞を受賞。以後、著作多数。TOEICテストで満点を5回獲得。2020年7月20日に受洗し、カトリック信徒となる。近著に『どろどろの聖書』『どろどろのキリスト教』(ともに朝日新書)など。

清涼院流水の記事一覧はこちら
次のページ
お前はイエスの弟子だろう?