「ペトロよ、あなたにそれを語らせたのは、天の『父なる神』である。わたしは、この岩(=ペトロ)の上に教会を立て、あなたに天国の鍵を与える。あなたが地上で結ぶ関係は天国でも結ばれ、解いた関係は天国でも解かれる」
全幅の信頼を寄せられたペトロは、イエスに「あなたが死なれる時は、われわれも運命をともにします」と誓っていました。ですが、イエスがローマ帝国の兵士たちに捕らえられると、ペトロは他の使徒たちといっしょに全速力で逃げました。しかも、近くにいた人から「お前はイエスの弟子だろう?」と見咎められた際には、「そんな男を知っていたら呪われても良いが、知らないものは知らん!」と3回も師を否定しました。
死から復活したイエスは、ペトロと再会した時、「あなたは、わたしを愛するか?」と3回尋ねました。ペトロが「愛します」と3回答えたことが3度の否認の埋め合わせとなり、彼は師から「わたしの羊たちを導きなさい」と後進の指導を託されます。
そんなペトロは「聖霊降臨」のあとは、別人のように毅然としたリーダーとなり、初代教会を率いるようになりました。それまで彼が恐れていたユダヤ教の既得権益層に対しても、怯まず立ち向かいました。記録が書かれる時に美化されたのだろう、という印象を持たれる方がいても当然ですが、初代教会の記録「使徒言行録」を書き遺したルカの手による「ルカの福音書」では、ペトロの情けなさや頼りなさをきちんと描いています。師を頼れない環境に置かれたことで、ペトロは実際に変わったのでしょう。