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 先進国のなかでも最低水準にある日本の食料自給率。しかし、それだけでなく備蓄量にも問題があると、愛知大学名誉教授で、同大国際中国学研究センターフェローの高橋五郎氏は危惧する。『食料危機の未来年表 そして日本人が飢える日』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して解説する。

【図】日本の穀物自給率はこちら

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日本政府は有事を想定しているのか?

 もし日本に直接関係する有事が起きたそのとき、日本人の食料、特に主食のコメは大丈夫なのだろうか? 国内自給率が最大のコメが大丈夫でないとすると、事態は深刻と言わざるをえない。

 農水省によると、日本で獲れるコメは年間約730万トン、輸入が70万トン程度、コメの需要は680万トン(大部分が国内消費)、輸出は無視できる程度に過ぎない状況である(2022年)。そして生産量も消費量も、長期的に見ると減少する傾向が続いている。

 コメの政府備蓄量は100万トン程度と決められ、民間在庫(販売待ちの在庫)を合わせた月別の保管量(政府備蓄+民間在庫)は月によって変動し、農水省によると、最多は全国の新米が出そろう11月で450万トン程度、最少は収穫期が始まる前の8月で200万トン程度と、250万トンもの差がある。

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有事の際は意味を持たない