読んでねえな。難しすぎたか。「悪かった。これを読んでみ」と次は歴史小説にしました。「宮本武蔵を知っとるやろ。二刀流でな。面白いぞ。勝負に対するこだわりが書いてあるぞ」
『徳川家康』『三国志』から、長嶋茂雄さんや王貞治さんの本まで、色んな本を渡しました。松井はそれをちゃんと読みました。
心が変われば 行動が変わる
行動が変われば 習慣が変わる
習慣が変われば 人格が変わる
人格が変われば 運命が変わる
ぼくが生徒に贈り、グラウンドにも掲げていた言葉です。松井は両親の教育もあって、素晴らしい人間性を身につけていました。それを磨き上げていったんです。
本人が入学時に口にした目標は二つ。「甲子園に行きたい」「慶應大学に進学したい」
中学で捕手と投手をしていたから、まずピッチングをさせました。
「ダメや。お前の投げ方では肩を壊す。慶應に行っても10勝しかできんぞ」
捕手も考えましたが、実は頭が大きすぎて、彼に合うマスクがありませんでした。それで、「スターは顔を出さなきゃダメだ。松井、バッターで勝負しよう」ということになりました。
さらに、大きい目標を与えました。「1年で石川県ナンバー1、2年で北陸ナンバー1、3年で日本一になろう」