「行ってもいい?」と聞いたら「いいよ」とカジュアルに

――博士号を取得してからは?

 ポスドク(博士号取得後研究員)としてそのまま九大に1年いることにしました。D2のときにイタリアやドイツのサマースクールに行って、すごく楽しかった。確か、このときコペンハーゲンにも行きました。2年に1度開かれる複雑系の国際会議に出たときも、すごく刺激を受けた。知らない人が私の論文を読んで声をかけてきてくれたりして。それで、もっと海外に行きたいと思って、ポスドクのときに米国のコーネル大学に3カ月ぐらい留学しました。今度は粉体じゃないことをやりたいと思っていたんですが、じゃあ何をやるかがなかなか見つからない。そんななかで、翌年4月から理化学研究所の基礎科学特別研究員に採用してもらった。

 ところが1年もたたないうちに中西研の助手のポストがあいたということで、九大に戻りました。当時の九大の先生方は皆さん、優しくて、助手の身分のままで1年間、海外で研究することが可能でした。その渡航費助成の申請書を書いているときに、たまたまニールス・ボーア研究所のキム・スネッペンが九大に来ていた。

――キムさんて韓国の方ですか?

 いえ、デンマーク人です。キムってファーストネームで、デンマークでは男性の名前です。

 中西先生の友人で、もともと統計物理の人ですけれど、どんどん生物っぽい研究を始めていて、私が会ったころは生物の研究をする物理学者のパイオニアの一人だった。ここに行ったら違うことができそうだと思って、「行ってもいい?」と聞いたら、「いいよ、いいよ」とカジュアルに言ってくれた。それで受け入れ先としてキムの名前を書いて申請書を出したら通った。行ったら、雰囲気もいいし、楽しくて。1年後に九大に戻りましたけど、先ほどお話ししたように准教授の公募が出たので、すぐに応募して通った。運がいいんですよ、いろいろと。

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親からのプレッシャーはなかったのか