御手洗菜美子さん(47)は2009年からデンマークのコペンハーゲン大学ニールス・ボーア研究所の准教授を務めている。九州大学の助教から転じた。「私は日本にいたとき直接的に女性差別的なことを言われたことはない。でも、ほかの女性がそういう扱いをされるのを見てきた」。だから、スキを見せたら自分も同じ扱いをされると肩に力が入っていたと、デンマークに行ってから気づいたという。かの地の研究グループの男女比はほぼ半々。仕事で日本を訪れた機会に東京でインタビューすると、「ずっとデンマークで研究生活を続けます」ときっぱり語った。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子)
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――ボーア研究所といえば、物理学者にとっての聖地です。20世紀初頭、コペンハーゲンの理論物理学者ニールス・ボーアのもとに多くの天才、俊才が集まり、議論を重ねながら「量子力学」という新しい物理学をつくり上げていきました。
そうですね。昔は独立した研究所だったんですけど、1990年代にコペンハーゲン大学物理学科と一体化しました。私はまず1年間、客員研究員という立場で行って、帰るころに准教授の公募が出たので、帰国してから応募書類を出して、面接を受けて採用されました。
――どういう研究をされているのですか?
数理モデルを使って生命を理解しようという研究です。最初に行った時期が、そういう研究グループがボーア研でスタートしたころでした。このときは細菌の遺伝子がどのように翻訳されてたんぱく質ができていくかを数理モデルで解析しました。私にとって新しい研究分野で、すっかりその面白さに魅せられた。今は、細菌とウイルスの相互作用を実験と数理モデルの両方から調べています。実験も自分でやっています。