「基本はサウナ、水風呂に入り、休憩をする──その流れが1セット。サウナで血管が拡張され、水風呂で収縮する。全身に血が回り、乳酸(疲労物質)も汗で出る。自律神経が整い、気持ちもポジティブになります」
●最初の一歩は部員集め
瀬尾さんは営業本部長として、すべての営業社員の成績を見る立場だ。サウナ部員のいる部署は、予算達成が早いと確信している。他社のサウナ部同様、サウナ部がコミュニケーションの活性化にも一役買っているというが、サウナ内での座り位置に上下関係はないのだろうか。
「サウナ室の座る場所は、大別すれば三つに分かれます。最も熱い通気口の下、次いで上段、下段の位置になります。慣れている人間が熱い位置に座り、できるだけ同じタイミングで出たり入ったりできるようにしています。そこに会社での立場は関係ありません」(瀬尾さん)
サウナ効果が業績に直結するかは定かでないが、日本サウナ・スパ協会理事で事務局長の若林幹夫さんは、効果をこう話す。
「一日中パソコンに向かっている人も多く、肩こりに悩むビジネスパーソンは多い。サウナ浴で血流がよくなると肩こりもなくなり、汗とともに乳酸も排出される。サウナと冷水の交代浴により自律神経の乱れを治し、不眠や食欲不振の解消、精神状態も安定します」
今回、各社にサウナ部の結成の経緯を尋ねた。どの部も熱心なサウナー社員の声掛けから始まっていた。グルメ情報の実名口コミサイトを運営する「Retty」のサウナ部は、畑上英毅さん(31)が部員を集めた。畑上さんはサウナに通って15年。今では週に6回は通う強者だ。
畑上さんは昨年4月に入社したばかりだが、すでに部員は畑上さんを含め15人。従業員数は100人だから、かなりの割合と言える。サウナの本場、フィンランド出身の社員もいる。本国のサウナには水風呂がなく、最初は驚いていたという。
活動は月に1回程度。他社との違いは、サウナ後に施設内で食事をとらないことだ。
「食事をする場所は自社が運営するグルメ口コミサイトで選んでいます。いつかは、サウナの口コミサイトも作りたい」
そう畑上さんは夢を語った。
●飲み会以外の楽しみ方
続々と企業に誕生するサウナ部。中心メンバーは、20代から40代の若手・中堅世代だ。
千葉商科大学講師(労働社会学)の常見陽平さん(43)は、その背景をこう分析する。
「サバイバルゲームやトライアスロンなど、若手のビジネスパーソンを中心に社内での飲み会以外の楽しみ方が増えている。共通するのは面倒くさいこと。一体感が得やすいからです。サウナもその一つでしょう。人と人との関係が希薄化するなか、結局は繋がりを求めている」
今回、各社おすすめのサウナ情報も掲載した。「都心部のサウナは男性限定のところが多く、男女で集まれる場所はまだまだ少ない」(若林さん)と課題もあるが、一度、御社でもチャレンジしてみては。ただし、飲酒直後の入浴や、高血圧など体調に不安のある方はご注意を。
(編集部・澤田晃宏、小野ヒデコ)
※AERA 2017年7月3日号