もはや、サウナは中高年男性だけの娯楽場ではなくなった。女性を意識したオシャレな施設も増え、社員のコミュニケーションの場として活用する企業も出てきた。
「水風呂は何度の設定ですか?」
そんな「マニアックな質問をする客が増えている」と、東京・池袋にあるスパ施設「タイムズ スパ・レスタ」支配人の堀内祐也さんは言う。芸能人がサウナ好きを公言したり、専門誌が発行されたりと、近年、ブームになっているサウナ。愛好家が増えるにつれ、その趣向も細かくなっているようだ。
同スパでは、サウナブーム以前から「ロウリュ」のサービスを開始した。ロウリュとは、サウナ発祥の地・フィンランドで生まれた入浴法の一種。高温に熱した石に水をかけ、熱い水蒸気を発生させて発汗を促すもの。発生した熱い水蒸気をスタッフがタオルなどであおいで客に浴びせかけるドイツ式は、正確には「アウフグース」と呼ぶが、日本では明確に使い分けはされていないようだ。
●サウナー市民権を獲得
堀内支配人はこう話す。
「ロウリュ目的で来るお客さんの動きははっきりわかるようになった。仕事帰りのビジネスパーソンなど、サウナ愛好家(以下、サウナー)は着実に増えています」
サウナ情報は主にSNSを中心にサウナーの間で共有され、なかでもカリスマ的存在なのがヨモギーさん(41)だ。愛好家を集めるイベント「サウナサミット」も仕掛ける。一日2回、年間700回以上サウナに通うヨモギーさんは、サウナブームの影響をこう語る。
「元々サウナが好きな人はいたでしょうが、ブームによって市民権を得て、より本格的にサウナを楽しむようになってきています。2年ほど前からサウナハット(のぼせ防止のためにかぶるサウナ用の帽子)を着用した人をたまに見かけるようにも。施設側も水風呂の設定温度を工夫するなど、サウナーに理解を示すようになってきています」
●真の主役は「水風呂」
企業内の「サウナ部」も続々と誕生している。活動自体は社内のサウナ好きでサウナに行くという、いたってシンプルなもの。ただ、侮ってはいけない。仕事にもプラスの影響が出ているという。
監査法人最大手、新日本監査法人のサウナ&スパ部代表・高須邦臣さん(41)は自ら「CSO(Chief Sauna Officer)」と名乗り、サウナ部の真骨頂をこう説いた。
「サウナに入るときは服だけでなく、肩書や世間体など背負っているものも全部脱ぎます。職場ではなかなか話せないような話も腹を割って話すことができるし、リラックスした状態での語らいは、飲みニケーションを超える効果があると感じます」
同社サウナ&スパ部は2016年8月に10人で結成し、今では20人が所属する。そのうち、8人が女性だ。