継枝さんは、こうアドバイスする。
「介護は、プロを交えたチームで乗り越えるため、プロに任せるところは任せ、家族はコーディネーター(調整)役を担う。介護休業は、介護に関する長期的方針を決めたり、介護をするための態勢を構築したりする期間に活用するという考え方が大事だ」
例えば、介護休業の3分の1を介護の初動で活用する場合を考える。自分で家族の介護をするのではなく、介護環境を整えるために休みを取得する。対象家族1人につき通算93日の利用なので、介護環境整備に約1カ月かけて、住宅の改修や福祉用具のレンタルなどの準備を整え、実際の介護はデイサービスやヘルパー、訪問看護、ショートステイ、高齢者向けの自治体サービスなどを利用するといった具合だ。
継枝さんは言う。
「介護サービスを最大限に利用し、介護をしすぎないこと。仕事と介護の両立が成り立つためのケアプランを作成し、早く職場復帰するために介護休業を取得するという心構えが必要になる。介護に直面する前に、介護保険制度や会社の仕事と介護の両立支援制度について知っておくと、慌てずに行動できるはずだ」
介護は介護のプロに任せるといっても、すべてを丸投げするわけにはいかない。特別養護老人ホームは、在宅での介護が困難になった「要介護3以上」(特例の要介護1・2)の認定が必要で、申請してもベッドが空くのには1~2年かかることも珍しくない。デイサービスを利用しても、夜や早朝は自宅で家族が介護する。介護の長丁場を乗り切るには、家族が介護動作の基本を知っておく必要がある。
介護動作の基本は、ボディメカニクスに基づいている。ボディメカニクスとは、骨格や筋肉、関節の相互関係を活用した身体力学のことで、ボディメカニクスの原理を用いれば、余分な力を使わずに、介護が必要な人の介助をすることができる。
有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームの運営を手掛けるSOMPOケアの教育研修部教育研修サービス課の植木康二郎リーダーはこう話す。