こうした老人ホームをはじめ、高齢者の住まいは実は料金体系も含めて、多種多様だ。
公共施設のひとつである「介護老人保健施設」では、衝撃的な事実が5月下旬に報道された。
熊本県八代市にある介護老人保健施設「アメニティゆうりん」で昨年2月から5月にかけて、常勤の医師が不在中に86歳から100歳の男女合わせて11人が亡くなっていたことが判明したのだ。
県によると、そのうち一人の女性は亡くなる直前にゼリーをのどに詰まらせる誤嚥事故があった。しかし、施設は誤嚥事故を報告しておらず、死因を「老衰」としていた。県は薬剤師の人員基準割れや運営体制の不備を含めて法令に違反したとして、勧告を出した。
県によると、施設を運営する優林会理事長の林邦雄医師(76)は事故があったことを認めている。
林医師は記者会見で「勧告事項を早く改善する」と述べた。さらに女性の死因を老衰とした理由について、「誤嚥より老衰の要素が強いと考えた」と説明した。
県は昨年、速やかに医師を配置するよう2度にわたって勧告していた。施設はその後、常勤医を配置した。それまでの間は、林医師が他の医院と掛け持ちで対応していた。
淑徳大学の結城教授も憤る。
「通常では考えられない出来事だ。医者がいなかったということだが、行政のチェック機能が疑われても仕方ないだろう」
(本誌・羽富宏文)
※週刊朝日 2019年7月12日号より抜粋