施設・事業所の種類では、特別養護老人ホームが30.4%で最も多かった。原因(同)は「教育・知識・介護技術等の問題」が60.1%と最多で、「職員のストレスや感情コントロールの問題」が続いた。

 家族や親族による虐待の加害者は息子が40.3%、夫が21.1%。原因(同)は「介護疲れ・介護ストレス」が24.2%で最多。種類(同)は身体的虐待が66.7%を占めた。

 介護職員による虐待の背景には何があるのか。

「ハードな仕事である介護現場では離職者が多い」と話すのは、社会福祉学が専門の淑徳大学の結城康博教授だ。

 結城教授によると、限られた人員で働くため、職員の負担が重い。待遇も良いとは言えず、職員のストレスがたまりやすい構造だと指摘する。

「重労働に見合う報酬を払うことで人材を確保し、負担を軽減させる必要がある。資格や適性のない職員に対する研修を充実させるなど施設側の対応が極めて重要だ」

 介護トラブル案件を扱うことが多い外岡潤弁護士も、虐待する職員の性質について言及する。

「やはり人手不足から、今の介護現場には、適性がない人材が多く入ってきてしまっている。そもそも虐待をする職員には二つのタイプがある。一つ目が『衝動型』、二つ目が『陰湿型』です」

 外岡弁護士によれば、衝動型は、ストレスなどが高じて衝動的に虐待をしてしまう。一方の陰湿型は、その職員が持っている気質からくる陰湿な虐待のことを指す。そしてこの陰湿型が徐々に増えているという。

 そもそも有料老人ホームとは、老人福祉法に基づく公的施設だ。高齢の入居者に食事や介護、健康管理などのサービスを提供する。

 開設するには自治体への届け出が必要で、ホームの職員が介護保険サービスを提供する「介護付き」と、介護サービスは外部の事業者から受ける「住宅型」の、大きく分けて二つのタイプがある。

 自治体や社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームとは異なり、民間事業者による運営が多い。厚労省によると、全国に約1万4千カ所あり、定員は約52万人。

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