このように考えると、実は、これまでの貴乃花関連の報道は、ずっと協会寄りの報道になっていた可能性が高い。つまり、私たち市民が抱いている貴乃花親方のイメージは協会に有利なように歪んだ形で形成されてきたのではないかという疑いがかかってくるのだ。

 改革に熱心だった貴乃花親方が、新しい挑戦をしては協会に阻まれるたびに、大手メディアは、協会の問題を指摘しつつも、常に、貴乃花親方のやり方が、「性急過ぎる」「もっと丁寧に話し合いをすべきだ」「協会内の支持が集まらない」などと批判的に報じていたが、これは、協会の声を反映したものであったのだろう。

 改革に挑戦するとき、改革者は既得権側の巨大な組織と戦わなければならない。その際、最も頼りになるのは、というよりも、唯一頼れるものといえば、実は、世論、そして、それを形成していく力を持つマスコミである。私自身、官僚時代に改革を進めようとするとき、既得権を守ろうとする省庁や族議員と戦うには、マスコミの援護に頼るしかなかった。逆に言えば、マスコミを味方に付ければ、困難な改革も可能になる。

 貴乃花親方は相撲協会と戦うだけでなく、協会べったりの相撲担当記者たちの忖度報道とも戦わなければならなかった。これでは、到底勝利することはできない。いつも寡黙だったのは、丁寧な説明をなどと言われても、協会寄りのマスコミに話すのは時間の無駄どころか、自分に不利益になると考えたのかもしれない。 

 貴乃花親方は、今回「敗北」を認めた。戦いは終わったかに見える。

 しかし、世の中そんなに甘くはない。今回の周到な貴乃花追放作戦を見れば、協会関係者の貴乃花親方に対する遺恨の強さがわかる。

 貴乃花親方は会見で、今後の弟子たちとの関係について、「迷った時は私のところに来て、土俵の上で体の使い方、足腰の使い方を伝えていければなと思います」と語っているが、協会がこうしたことを許さない可能性がある。また、小学生の指導を行うという報道もあるが、こうした活動についても表立ってではないが、様々な嫌がらせや横やりが入るのではないだろうか。

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問題の核心は協会の腐敗構造