
紀州の「ドン・ファン」元妻が詐欺事件公判で持論展開 「男の人は性欲がからむとバカになる」「カネを払わせる自信はあった」
須藤早貴被告と野崎幸助さん
和歌山県田辺市の「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん(当時77)が2018年に急性覚醒剤中毒で死亡した事件で、殺人罪で起訴された元妻の須藤早貴被告(28)は、北海道の別の男性、Mさんから3000万円近い現金をだまし取ったとする詐欺罪にも問われている。この詐欺事件の公判が5月27日、和歌山地裁であり、被告人質問で須藤被告は容疑を否認。「男の人は性欲がからむとバカになる」などと持論を展開した。
検察側の冒頭陳述などによると、須藤被告は札幌市内の美容専門学校に通いながら、ススキノのキャバクラでアルバイトをしていた2014年10月ごろ、客として来店したMさんと知り合った。須藤被告はアルバイトをやめたが、その後15年3月から16年1月にかけて、
「美容専門学校の機械を練習中に壊したので300万円を弁償しないといけない」
「美容専門学校のコンテストで、腕を認められ海外留学ができる。留学準備金が1500万円、手数料が7万円で合計1507万円が必要」
「東京で美容コンテストがあり、出場したモデルの女の子の髪を傷めたり、やけどさせたりした。慰謝料等の合計が1174万6560円になった」
などと3回にわたって嘘をつき、合計約2980万円をだましとったとされる。
5月27日の公判では、須藤被告はそれまでつけていた白いマスクを外して顔をあらわにし、「パパ活」についての持論を語った。
Mさんと親しくなったきっかけについては、
「キャバクラでお酒を入れてもらわないといけないので、20歳と言っていた。けどMさんがしつこいので、18歳で美容の専門学校に通っている、親がお金を出してくれないので、キャバクラでバイトしている苦学生だと説明したらMさんは食いついてきた。胸がEカップというとさらにです」
キャバクラのアルバイトを辞めた理由は、
「(Mさんから)キャバクラのバイト代と同じ金額をお手当で払うのでやめてほしいと言われました。2014年12月にはやめて、愛人関係になった」。
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2021年4月、捜査員に連行される須藤被告(中央)。このあと野崎さんの事件で逮捕された
「お手当」と「お小遣い」は総額650万円
その後、毎月、Mさんから
「お手当をもらっていた。月20万円です。会うのは週一で、カラオケに行きます。そこで、Mさんから体のあちこちを触られます。あった時は10万円を別にお小遣いでくれました」
と話した。「愛人関係」にあったという約1年1カ月で、Mさんからの「お手当」「お小遣い」は総額650万円相当にのぼるという。こちらは詐欺事件として立件されていない。
須藤被告が「学校の機械を壊した」と300万円をだましとったとされる15年の春、須藤被告は専門学校にもススキノにも近い札幌市内のタワーマンションに引っ越した。
「2LDKで、家賃は10万円超。ジェットバスがついていて、学生では借りれないタワマンでした。1人暮らしでしたが、1部屋は衣裳部屋にして、シャンデリアなどもつけて、家具なども買ったら300万円ほどかかった。美容学校は春休みだったので、機械を壊したと言ってないはず。引っ越し代かもしれないが、はっきりしない。けど(Mさんから)300万円と引っ越し代100万円、合計400万円をもらった」
「私は未成年で契約できないと不動産屋から言われた。そこで、Mが契約して私は孫ということで、住むことができた。けど、Mは部屋に入れませんでした。週一にカラオケで会うと、だんだん体を触るのがエスカレートしてきたので、何されるかわからなかったから」
留学準備金として1500万円余をだまし取ったとされるのはタワマンに住み始めて3カ月ほどした15年7月ごろ。
「留学のことは前にもMに言った。時間かかるが、と言いながら出してくれた」
1500万円が須藤被告の口座に入金された後のこと。
「カラオケで体を触られたのですが、前戯のように体を愛撫され、一番ひどかった。『Mちゃんやめてよ』と私が立ち上がったら、Mはプライドが傷つけられたのかやめてくれました。それでも1500万円払ったからなのか、『これでホテル行けるよね』などと言い始めた。それまでMは、未成年の体を触りまくることが好きな変態かと思っていたが、ガチでしたいんだとわかった。そのころ、お金でセックスするなんてことは全然頭になかった」
その後も、須藤被告はMさんから「お手当」と「小遣い」を受け取り続けた。
1100万円余りを詐取したとされることについては、「ダメ元」だったと言う。
「SNSで募ったモデルさんと美容学校のコンテストでトラブルになったのは事実。ただ、Mに1100万円をダメ元で頼んだのは、2万5000円ほど私が弁償して、トラブル解決後でした」
「Mは私が未成年で、巨乳であることを気に入っていた。けど、成人式が近くなりエッチもできそうにないし、切られるだろうと思い始めていた。Mは成人する前の私の体を狙うようなメールも送って来ていた。そのころもカラオケで会っていたが、じゃれあいながら『もうちょっとでやれる』『今日はこのくらい』とちょっとずつ触らせて、1100万円出せばやれるんじゃないかと思わせようと、ボーダーラインを作っていた」
1100万円余りが入金されたことについては、
「男の人は、性欲がからむとバカになるというか、IQというか低くなる。Mの好みはわかっていたので、カネを払わせる自信はあった」
と言った。
「キャバクラは嘘ありきの世界」
そして、詐欺ではないと主張する理由についてはこう主張した。
「キャバ嬢と遊ぶにはカネがかかる。Mは銀行勤めから退職し、何億円もあるとかいう資産家らしいので1000万円くらいもらっても大丈夫と思った。銀行勤めでお金のことに詳しいので私が嘘言っていたことはわかっていたはず。それに嘘を言ってお金をもらったのは事実ですが、留学もカットモデルも、現実にはあった話。それをふくらませているだけ。キャバクラは嘘ありきの世界で、Mもわかっている」
資産家からは、お金をだましとってもいいというような理屈に聞こえる。
Mさんへの弁済の意思を聞かれると、
「逮捕され拘置所とかいるときは、ちょっとくらいならと考えた。けど、Mは法廷で嘘ばかりいうので、そういう気持ちになれない」
と述べた後、裁判所に訴えるようにこう話した。
「(だまし取ったとされる)お金は体を触る対価と(Mさんの家族などへの)口止め料です。私が詐欺師と言われるなら、Mは嫌がる私にお金を渡して体を触る性犯罪者。Mは全面的に私の言い分を信じて騙しとられたのではない」
Mさんのお金で旅行し、1年後には野崎さんと結婚
Mさんから受け取ったカネの使い道は、
「海外旅行と国内旅行、そしてブランド品に使いました」
と語った。
検察の冒頭陳述によると、須藤被告はMさんから16年1月に1100万円余りをだまし取った後、同年6月からの韓国旅行や、同年12月から17年1月にかけてのフランス旅行の代金を支払っていた。
須藤被告が和歌山県の資産家、野崎さんと結婚したのは18年2月。野崎さんの自伝には、須藤被告が「羽田空港で転んだ私を優しく助けてくれた」のが出会いで、「ファッションモデルとして海外も飛び回っている」とも記されていた。
須藤被告が殺人罪などに問われている野崎さんの事件の裁判は、まだ始まるめどがたっていない。須藤被告がどんな主張をするのかも現時点では不明だ。
(AERA dot.編集部・今西憲之)
〈おことわり〉
須藤被告は詐欺事件の当時は未成年でしたが、殺人という重大事件の被告となっていることなどを考慮し、実名で報じました。