「難治がん」の記者 なぜ今、加計でも日報でもなく「戦争はいけない」なのか (2/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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「難治がん」の記者 なぜ今、加計でも日報でもなく「戦争はいけない」なのか

連載「書かずに死ねるか――「難治がん」と闘う記者」

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野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は抗がん剤治療を受けるなど、闘病中

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は抗がん剤治療を受けるなど、闘病中

街角で見かけた認め印のケース。一つ一つにそれぞれの人生がしのばれる

街角で見かけた認め印のケース。一つ一つにそれぞれの人生がしのばれる

人類はどこへ向かうのか。人類と類人猿の進化の流れ(秀文堂「カラー版改訂 生物図説」より。左)と集団的自衛権の行使が容認される前に出版された内外出版「日本の防衛法制 第2版」

人類はどこへ向かうのか。人類と類人猿の進化の流れ(秀文堂「カラー版改訂 生物図説」より。左)と集団的自衛権の行使が容認される前に出版された内外出版「日本の防衛法制 第2版」

 今月18、19の両日、北朝鮮との交渉を控えたトランプ米大統領と安倍晋三首相の会談が予定されている。北朝鮮と関係国の協議の結果、朝鮮半島に核兵器が残るおそれを専門家は指摘する。将来にわたって「共生」できる相手か。いま一度、考えるべきではないか。

 もちろん、そうしたからといって、ものごとがすぐに前進することはない。先制攻撃できる実力を備えようとにわかに騒ぎ立てても、相手国を刺激するだけかもしれない。

 ただ、自分にとって大切な人が苦痛に顔をゆがませる姿を想像すれば、「どうせできることはない」と開き直ることはできないはずだ。

 膵臓(すいぞう)がんが1、2センチ以下の大きさに育つまで12年程度とされる。人知れず大きくなり、やがて命を脅かす。一方、北朝鮮のミサイル発射技術は目に見えて進んできた。「気づかなかった」では通用しない。

  ◇
 私は新聞記者としては命の重さに鈍いほうだったかもしれない。

 名古屋で暴力団事件を担当していたころ、捜査関係者に「例のコロシ(殺人事件)ですが」と尋ねたことがあった。「ああ、器物損壊事件な」と先方。あいつらは人間じゃない、ただの「モノ」だという説明を不謹慎だと思いつつ、ハハハと笑った。ウランバートルの一夜も、ルーチンワークに過ぎない。核をリアルに感じられない。それはかつての私自身の姿だ。

 その私が、がん患者になって実感できたことが「戦争はいけない」ということだ。

 先ほど書いた痛みはすべて生きるためのものだ。医療の現場では、多くの医療者が患者の命のために力を尽くしている。

 それだけに、みんなで永らえようとする命を奪い、プツンと断ち切る戦争の非道さが際立つのだ。戦意を喪失させるためには、病院や核関連施設も攻撃対象とし、福島の原発事故の再来すらいとわない。

 そうした非道な発想の象徴が核兵器だ。

 先日、ツイッターで、胸部大動脈瘤(りゅう)の手術を受けた男性がこうつぶやいていた。「集中治療室で苦しみながら、理不尽に命を奪う戦争は絶対許されないと考えていました」。病気によって命を実感すれば、誰しもそう思うのではないか、と想像した。


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