桑原将志や倉本寿彦を不調であるにもかかわらず、起用し続けた我慢強さも注目されるが、宮崎敏郎を首位打者に育てあげた手腕も見事だ。あれだけのフルスイングを許容した采配はもっと評価されるべきだ。

 また、打順変更や中継ぎの配置転換などに際して、選手を尊重してしっかりとコミュニケーションを取ることを忘れなかった。監督然するタイプではないが、堂々としている様に選手が尊敬の念を抱き、ポストシーズンでの好結果につながった。

【金本知憲( 阪神)】 評価:A

 シーズン2位でフィニッシュ。クライマックスシリーズ(CS)では3位のDeNAに後塵を拝したが、天候なども影響して致し方ない部分はあった。指揮官の采配による敗退とは感じられなかった。

 むしろ、戦力の整備は着実に進んだといえる。今季60試合登板5人を果たしたブルペン陣はマテオ、ドリスの両外国人に試合のクローズを頼り切るだけではなく、リリーバー全般に厚みを生み出した。桑原謙太朗を再生させたのは見事だし、FA移籍2年目の高橋聡文を生かし、元クローザーの藤川球児が生きる場所を見つけ、3年目の石崎剛も一本立ちさせた。先発陣も藤浪晋太郎の予想外の不調にも崩されず、8年目の秋山拓巳を再ブレークさせた。

 打線の方は、超変革を継続。中谷将大、大山悠輔らの台頭を促しつつ、糸井嘉男、福留孝介、鳥谷敬の3人のベテラン、上本博樹、俊介ら中堅世代の頑張りにも目を付けた。来季、高山俊や糸原健斗らが巻き返してくれば、指揮官の狙い通りに事が運ぶはずだ。

【緒方孝一( 広島)】 評価:B

 ほとんどA評価といっていい。レギュラーシーズンをダントツで制覇した手腕は高い評価を受けていい。ただ、それだけの圧倒的な差を作りながら、CSで敗れてしまったことはマイナス要素。勝敗のアドバンテージ、日程面での余裕をプラスに変えられたかったのがやや厳しい評価につながった

 とはいえ、現状に満足しないチーム作りはさすがといえる。田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、鈴木誠也に頼るだけのチームにするつもりはなく、ファームからの突き上げをどんどん受け入れた。鈴木の代役として4番入った松山竜平や、三塁手としてチームを引っ張った安部友裕、2年目の西川龍馬ら選手層の厚みはセ・リーグ随一だ。

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