政府や自治体による外出自粛要請のもと、普段より極端に運動量が減ってしまったというシニアは多いのではないだろうか。家の中にこもりきりで、歩いたり走ったりする時間が減れば、やはり足には何かしら支障が出てくるものだ。運動不足からフレイル(虚弱)が進まないよう、家の中でできることをライフジャーナリストの赤根千鶴子氏が紹介する。
「まず一番に気を付けたいのは足のむくみです」と教えてくれたのは、足の総合病院「下北沢病院」院長の菊池守さんだ。菊池さんは今までに1万5千人の足を診てきた形成外科医。運動不足の人たちにこう警鐘を鳴らす。
「家の中にこもっていると、どうしても同じ姿勢ですわっている時間が長くなりがちです。しかし心臓から足に送られた血液は、ふくらはぎの筋肉のポンプ作用で心臓に戻るのです。すわりっぱなしで足を動かさないようになると、当然ふくらはぎの筋肉のポンプ機能は働きにくくなります。そして足の静脈の血流は滞りがちになり、それが足のむくみへとつながってしまうのです」
むくみが常態化してくると、なんだかいつも足が重たいように感じてしまうという。“重たい足”はあっというまに、こまめに動く気力を奪っていく。
「そしてますます身体を動かさないようになると、足のむくみはより強く出て、どんどん悪循環に陥ります。立ったり歩いたりするのを敬遠するようになると、やがては足の筋力も低下してきます。しかし筋力というものは取り戻すのに時間がかかるのですよ。1カ月動かなければ、元の筋力を取り戻すのに最低3カ月はかかると思っていただきたいです」
なんとも、恐ろしい話。「足のむくみくらい、仕方ないか」などと放っておいてはならないのだ。
さて、では足のむくみと筋力低下を防ぐためには、毎日どんなことに気を使っていけばよいのだろうか?
「家の中でのことに関して言うならば、まず『30分に1回は必ず動く』という意識を持つことです。居間で過ごす時間が長くても、台所に水を取りに行くとか、お茶をいれに行くとか、こまめに行動することを面倒くさがらないようにしましょう」