入試に詳しい教育ジャーナリストの神戸悟さんは、「おそらく他大の経済学部でも抱えている問題では」とし、早大政経学部の改革をこう評価する。
「数学の基礎がないと経済学は学べない。政治学もデータ分析などで必要。志願者を減らしたものの、ほしい学生を取れたのではないか」
浅野中学・高校(横浜市)は毎年、早慶に100~150人の合格者が輩出する進学校。進学指導部の小林俊洋教諭は言う。
「今年は東大コースの生徒を中心に、政経学部の受験者が増えた。例年東大志望の生徒は併願校を絞ることが多いのですが、今年はコロナの影響で安全志向が働いたようだ。政経学部に現役合格した24人のうち、東大文系コースが22人。昨年は現役合格者18人のうち東大コースは13人だったので明らかに増えている。逆に私立文系の生徒からは敬遠されました」
■青学は従来型では増加
一方、学部独自の論述問題は特別な対策はしていないという。
「初年度なので、サンプル問題を希望者に解説する程度でした。ただ上位層の生徒は、従来型の学習で十分対応できていたようです」
青山学院大も志願者を大きく減らした。学部ごとに受ける「個別学部日程」は経済学部を除き、共通テストと論述や総合問題との併用方式を導入した。その「個別学部日程」が43%減だったのに対し、従来の、全ての学部で同日に同一試験を行う「全学部日程」は7%増と対照的な結果になっている。阪本浩学長は言う。
「共通テストで基礎学力をはかり、学部独自問題で思考力や判断力、表現力を見ることが入試改革の目的。大きく方式を変更するので志願者減は想定していましたが、全く予想外だったコロナが減少に拍車をかけました。高校には、普段の授業をしっかりと受けていれば対応できる内容だということを伝えていきたい」
神戸さんは「方向性は正しい」と理解を示しながらも、「受験生は複数の大学と併願し、私立文系だったら英語、国語、地歴の3科目で受験するのが主流。青山学院大法学部法学科は、国語と世界史と日本史と政経の総合試験を出題すると予告があったが、併願を念頭に勉強する受験生にとっては負荷が大きかったのでは」とみる。