女性トップの富谷市は仙台市に隣接するベッドタウンだ。富谷市は「政策として『これだ』という決め手があるわけでなく、地道な取り組みの積み重ねによるもの」(健康推進課)としつつ、「この地域は血圧の高い市民が多い傾向がありますので、職員が出向く介護予防教室や、行政と市民のパイプ役を担う健康推進員を増やすなどして、健康づくりや病気の予防に努めています」。同市は、がんの項目でも上位に食い込んだ(男性10位、女性12位)。
老衰を多い順で集計したのは、死因となる病気がなく“大往生”を遂げたと、とらえることができるからだ。寿命を市区町村別に詳しく分析できないものの、天寿を全うしたとみなしてみた。
老衰で亡くなる人が一番多かったのは、男性が長野県根羽村、女性が同県泰阜村だ。根羽村は「介護予防の充実」(住民課)、泰阜村は「在宅福祉を支える態勢の強化」(住民福祉課)に力を入れている。
長野県南部、天竜川沿いの山間にある泰阜村は女性1位に輝きながら、男性でも2位だった。長年、在宅福祉を重視し、村内の高齢者は月4回まで1回あたり500円で自宅で診療が受けられるといった独自策を展開。“福祉の村”として定評がある。
ランキング上位には長野県勢が目立つ。同県は国勢調査などをもとにした厚労省の「都道府県別生命表」(15年)で平均寿命が女性1位(87.67歳)、男性2位(81.75歳)。“ご長寿県”を裏付けた形だ。
とくに県南西部にあり、愛知や岐阜と接する根羽村は、村おこしのため医療や福祉だけでなく、林業や酪農の振興、「山村留学」や「オンライン婚活」の支援といった住民サービスの向上にも取り組む。村外への情報発信も積極的で、移住を考える人も増え、20年には年間を通じて転入数が転出数を上回る「社会増」を30年以上ぶりに実現した。
超高齢化や過疎化で、市区町村も生き残りをかけて待ったなしの対応を迫られる。今回のランキングも終(つい)のすみかさがしの一助にしてほしい。(本誌・浅井秀樹、池田正史)
※週刊朝日 2021年8月6日号