「ピーターの法則」では、このキャリア上昇が止まる点について、「その人が昇進した階層において『無能』と見なされた時点」と指摘します。
どういう意味か、詳しく説明しましょう。
たとえば優秀な営業マンが主任に、あるいは優秀な主任が課長に昇進したとします。ところが管理職として昇進した途端に、ダメになってしまう人たちがいます。それまで「人柄」を武器に商品を売っていた人や、販売の第一線である「現場」にいたからこそ力を発揮できた人が、昇進したことで仕事の環境が変わり、成果が出せなくなってしまう。また管理職に求められる「マネジメント」や「リーダーシップ」などの能力も備わっていない場合がある。そのため、昇進が契機となって「無能」をさらけ出してしまうのです。
主任や課長レベルの昇進を生き残った人々も、同じ運命をたどります。統括課長、次長、部長、局長、平取、常務、専務、副社長と、昇進するにつれて求められる能力は高くなります。
いずれある時点で、求められる能力に追いつかなくなってしまうのです。
ゆえに「各層のポストは、自分の限界に達してしまった人たちだらけ」という結果が生じる。ほとんどの階層が「無能レベル」に達した管理職で埋め尽くされてしまうわけです。
これが、「組織は無能化する」という「ピーターの法則」です。階層組織が昇進を原動力にして従業員の動機付けを行う限り、会社や官僚組織のすべてに「ピーターの法則」は当てはまります。そうして個人が本来持つ能力は十分に発揮されずに埋没し、組織は沈滞していくのです。
■死に方とは生き方なり
「ピーターの法則」が示す会社の光景は、生物がある時点で成長を止めて老化し、「死」へ向かっていく姿と似ています。その組織に所属するサラリーマンたちも、緩やかに「社会的な死」の方向へ進んでいると言っても過言ではないでしょう。
それでは、この「死」を防ぐ方法はあるのでしょうか?