藤原和博さん(「朝礼だけの学校」校長)
藤原和博さん(「朝礼だけの学校」校長)
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 死に方とは生き方なり。最新刊『60歳からの教科書――お金・家族・死のルール』(朝日新書)で、人生100年時代を生き抜くスベをまとめた藤原和博さんは、「組織における死」が生きるヒントになるという。無能にならずに人生をまっとうするには何をすべきか。本書より抜粋してご紹介する。

【図】組織のヒエラルキーはこちら

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■「ピーターの法則」が教える組織の死

「死」には、「生物学的に機能を停止する」という意味と、「社会的に活動を終える」という、2つの側面があります。

「死」を考える上で、組織で長年働いてきた皆さんが想像しやすいのは、後者の「死」ではないでしょうか。ですから、まずそこから始めていきたいと思います。

「ピーターの法則」と呼ばれる、組織に関する法則をご存じでしょうか。

 ひと言で言えば、「あらゆる組織は無能化する」というものです。なぜかというと、時が経つにつれて、階層社会のすべてのポストは、その責任をまっとうすることができない従業員によって占められるようになる傾向があるからです。

 どういうことでしょうか?

 ほとんどの会社組織は「階層」構造になっています。その構造を絵に描き表すと「はしご」のようにも見えるので、「組織のラダー」とも呼ばれています。

 会社組織に新卒で入った人のほとんどは、平社員からキャリアをスタートします。

 読者の皆さんもきっとそうだったことでしょう。一つの部署で数年間仕事を続けたあとで、他の部署へ異動を命じられることもあります。そうしていくつかの異動を経験し、ある程度会社全体の仕事を覚え、実績が認められると、主任に昇進します。

 主任になってからも部署の異動はありますし、さらに出世して係長になったり、転勤を経験する人も。課長になって、そこで昇進が止まる人もいれば、課長から次長、次長から部長、局長となってどんどん昇格していく人もいます。

 しかし、会社組織の階級は無限ではないので、必ずどこかの時点で止まってしまうのです。

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たとえば優秀な営業マンが主任に昇進したとします…