働く親にとって、子どもの預け先は「保育園一択」と考える人は多いが、延長保育や給食を実施する幼稚園も増え、フルタイム勤務でも幼稚園を選ぶ人が増えている。どんなことが決め手になったのか。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。
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延長保育の充実、給食の実施。いま、そんな幼稚園が増え、「働くからこそ幼稚園」がひとつのトレンドになりつつある。
東京都内の広告会社で働く女性(36)は、長男(5)が年少になった春、それまで通っていた小規模の認可保育園から私立幼稚園に転園させた。決め手は、通常保育後に隣接している系列中学のプールまでコーチが送迎してくれてレッスンが受けられることと、広い園庭があることだった。女性はこう話す。
「ずっと『働くイコール保育園』だと思い込んでいました。保活の時は、そもそも幼稚園は案内されず選択肢にもなかったけれど、ママ友に夕方まで預かってくれる幼稚園があると聞いて、私でも預けられると思った」
それまで通っていた認可園には園庭がなく運動量が少ないことと、長男が「つまんない」と口にすることも気になっていた。
「通常保育中にも専門の先生による英語などの授業があり、行事も充実している幼稚園の方が息子に合っていると判断しました。習い事もできるし、親子ともに満足しています」(女性)
■働き方の変化追い風に
保育政策に詳しい日本総研の上席主任研究員の池本美香さんは「保育園に教育機能がないわけではありません」と前置きし、こう指摘する。
「時短勤務や育休が長くとれるようになっていることに加え、コロナ禍にリモートワークが進んだことで、早めのお迎えが可能になった影響も大きい。働き方の変化に伴って、幼稚園を選ぶ人が増えているのでしょう」
待機児童が社会問題化してから約20年。政府主導で認可園の数は急速に増えたものの、園庭のない園が増え、質の悪い保育園も散見されることなども背景にあると考えられるという。