■仕事復帰に否定的な祖父母

「未婚率が上がる今は、シングルの人も多いほか、晩婚化の影響から不妊治療に取り組んでいる人も少なくない。こうした中で、『孫の話を、友達にもおいそれとできない』という祖父母世代が増えています」(同)

 晩産化も進む中で、自分の親世代の介護子育てとが同時期に重なるケースも出てきている。昨年、42歳で第1子を出産した東京都在住の矢上紀江さん(仮名)は、出産とほぼ同時期に、地方に住む母親(74)に介護が必要な状況になった。やっと親に孫がいる喜びを味わってもらえると思っていた矢先のことで、紀江さん自身もショックだったが、こればかりは仕方のないこと。幼子を抱えながらの遠距離介護は難しく、母親は施設に入居することになった。紀江さんは、コロナ禍での面会制限の合間を縫っては、孫の顔を見せに、たびたび母親のいる施設に足を運んでいる。

「親がいつまでも孫育てができる状態でいるわけではありません。子ども世代は、親に預けられる年齢には限りがあることを踏まえて、心の準備をしておいたほうがいい」(棒田さん)

 孫育てが広がる背景には、共働きの子育て世帯が増えている現状がある。独立行政法人労働政策研究・研修機構の統計調査によれば、2021年時点での専業主婦世帯は全体の31%、共働き世帯は69%となり、専業主婦世帯比率は過去最低割合を更新した。にもかかわらず、「無理して働かなくていいんじゃない?」という親世代からの視線がツライという子世代の声は、いまだに多く聞かれる。

 都内で会社員として働く佐藤弘子さん(仮名・38歳)もその一人。育休を1年で切り上げて職場復帰する時、義父母から批判的な口調で「まだ子どもが小さいのに、かわいそう」「そこまで仕事が大事?」と言われた。だが、これからかかってくる子どもの教育費や家の購入費用などを考えると、夫の収入だけではとても足りそうにない。「私が仕事を続けないと、これからの生活がかなり厳しくなってしまうので」と説明するも、義母からは「息子の稼ぎが悪いって言いたいんでしょ」「息子の家では、あなたが一番偉いのね」と追い打ちをかけられてしまった。以来、「抑えていた心のシャッターが閉じた」という弘子さんは、どこで“爆発”するかわからないため、極力、義父母との距離を保つようにしているという。

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