週刊朝日 2022年9月23・30日合併号より
週刊朝日 2022年9月23・30日合併号より

 いわく、定時に仕事を終えて帰宅すると、家の中は孫が遊んだ残骸で、“大荒れ”。「帰省した時ぐらい、ゆっくりさせてよ~」と主張し、昼間から寝ている娘に、夕飯の支度を期待するのはとうにやめた。「帰省した時じゃないと行けないから」と、子どもを置いて、友達と飲みに出かける日もある。子育てで疲れているのはわかるが、「お母さんもお父さんも働いているんだから、ちょっとは家事を手伝ってよ」と言うと、「おじいちゃんもおばあちゃんも働いてるって特殊だよ。友達の実家は、旅館みたいに迎えてくれるって聞くのに」と、娘は途端に不機嫌になった。これには和子さんもムッとしたが、「今だけのことなんだから、自分たちが我慢しよう」と決めた。

 だから仕事帰りに、いつもよりかなり多めに買い物をし、孫に合わせたメニューを用意する。娘と孫が寝て、荒れた部屋を片付けると、やっと自分の時間だが、そのころには疲れ果てて布団に倒れ込む。

「実家にいる時ぐらい、ゆっくり甘えさせてあげたいという親心もあって……。今はこうやって帰省してくれるうちが花だと思って迎えるようにしています」(和子さん)

 人生100年とも言われる長生き時代、65歳を過ぎても現役で働くシニアが増える中で、必ずしも「孫育てウェルカム」という構図ばかりではないことがうかがえる。

「曽祖父母から孫まで、4世代が生きる時代。年金にも期待できない今後は、働く人が増え、孫育てどころではないケースも出てくるでしょう」

 孫育てに関する講演などを各地で行うNPO法人「孫育て・ニッポン」の棒田明子理事長は、こう指摘する。定年延長などで働く祖父母が増える中、一部の企業や自治体では、社員や職員の孫育てを後押ししようと「孫育て休暇」なる制度を導入しているケースもある。働きながらも孫育てにかかわりやすくすることで、共働きの多い子育て世代を支援しようという狙いだ。

「今の祖父母世代は、自分の親世代、子ども世代、そして孫世代と、いわば3世代に対する“トリプルケア”の役割が期待されることがある。リタイアする年齢も先延ばしになる中で、悠々自適な老後の暮らしとは程遠い」(棒田さん)

 楽しいはずの孫育ても、それが日常のこととなるとストレスが蓄積されがちだ。同じ状況の人と話すことが大切なはけ口になるが、少子化の今、孫の話題は気軽に話せるテーマではなくなっているという。

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