■現役延長の時代 祖父母も忙しい
ここに加わったのが、義母の介護だ。義母宅は、自宅から電車と徒歩で片道40分ほど。移動だけで往復1時間以上かかるが、2~3日に一度は様子を見に行くようにしている。もちろん心配な気持ちが大きいからだが、1週間でも様子を見に行かないと、義母の機嫌が悪くなることも理由の一つだ。「食べ物がなくなったから、仕方なくタクシーでスーパーに行った」と聞くと「すみません」という気持ちになるし、「芳子さんは気楽でいいわよね。お孫ちゃんと遊んで暮らして幸せね」と聞けば、なぜか悪いことでもしているような気持ちになる。無論、義母も孫やひ孫を可愛がってはいるが、「私のこともちゃんとお願いね」という視線がひしひしと感じられる気がする。週2日通っていた趣味の習い事は、辞めざるを得なくなった。
子育てに奮闘している娘に心配をかけまいと、義母の介護について娘には詳しく話していない。自営業の夫(70)には愚痴をこぼしたくなる時も多々あるが、夫はまだ現役で仕事をしていることもあり、なかなか母の介護に手が回らない。
「必然的に、自分の役割なのだと言い聞かせています。60代って、ゆったりしたイメージだったけど、大違い。若い世代と親世代の“世話役”になる、これまでとは違う忙しさが訪れる時期なんだと実感します」(芳子さん)
“70歳定年”に向けての動きが加速する今、祖父母世代が現役で働いているケースも珍しくない。長年、保険会社で働いている澤本和子さん(仮名・63歳)は、同じく現役で働く夫(64)と2人暮らし。第一線は退いたものの、2人ともフルタイムで勤務する仕事中心の日々を送っている。そんな中、他県に住む娘が2~3カ月に一度、幼い子ども2人を連れて長期帰省することが、いつのまにか定着した。可愛い孫の成長を見られるのは心から嬉しいのだが、「また帰省するのか……」と気持ちがブルーになることもあるのが正直なところだ。