「定期借地権付きのマンションは、期間が終わった後に更地にして地主に返すのが前提なので、修繕積立金のほかに解体準備金も積み立てています。こうした仕組みをすべてのマンションに適用する方法もある」(米山さん)

 建て替えには高いハードルが存在する以上、現存のマンションの寿命を延ばす方向で、建物を適正に管理していかなければならない。今年4月に全面施行された改正マンション管理適正化法では、管理計画認定制度など、自治体がマンション管理に関わる仕組みが導入された。背景には、適正に管理されていない分譲マンションが少なくないという実態がある。

 東京都が1983年以前に建てられたマンション(6戸以上、約1万2千棟)を対象に実施した調査によれば、2021年末時点で16%に「管理不全」の兆候があることがわかった。都は19年、管理状況の届け出をマンション管理組合に義務付ける条例を制定。管理不全の兆候があるマンションには、区や市などの自治体と訪問調査を進めるほか、マンション管理士などの専門家の派遣を無料で行うなどしている。

「ただ、管理計画認定制度は義務ではないため、効果を発揮するまでには時間がかかるでしょう。例えば認定を受けると税金が減免されたり、認定の有無によって中古物件としての価値が大きく変わるなど、よほどの金銭的なメリットがなければ、大きな改善が見られないかもしれない。今後、より一層のテコ入れが必要になってくる」(同)

 人生100年時代に対応できるマンションのあり方が求められている。(フリーランス記者・松岡かすみ)

週刊朝日  2022年9月2日号

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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