解体処分には原則として、全区分所有者の賛成が必要になるが、老朽化したマンションでは、相続放棄などによって所有者が不在となる“空き家”も増加傾向にある。
「区分所有という仕組みは、建て替えや解体を考えたときにあまりにハードルが高い。住宅不足の解消を考えなければならなかった時代に、マンション建設は国としても手っ取り早い手段だったが、最後の“処分”のことまで考えるのを先送りにしてきた結果、問題になり始めている」(同)
現在、都市部のみならず、地方でも建設が進むタワーマンションの“処分”には、さらに大きな壁が立ちはだかっている。一般的なマンションは平均戸数が60戸とされる中、タワマンは戸数規模が大きく、1棟につき千戸を超える規模のマンションも存在する。マンションでは、共用部分の変更など特別決議に該当すると判断される場合には、区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上の多数決によって物事が決められる。つまり戸数が多くなればなるほど、合意形成が難しい側面があるのだ。前出の日下部さんは言う。
「一般的なマンションでも、建て替えの合意形成は最低3年はかかると言われます。そうした中、タワマンでは高層階と低層階で、区分所有者の世帯収入や価値観が異なる傾向がある。さらに高層階では雨風の影響などで外壁に損傷を受けやすいなど、層階によって抱える問題も異なります。こうした点からも、合意形成が難しい傾向にあるのです」
■解体費見据えた仕組み作り急務
いずれやってくるマンションの処分問題には、どんな対策が考えられるのか。土地に価値があれば、更地にして売却すれば解体費用の多くを回収できるが、そうでない土地は解体費用のほとんどを所有者が負担しなければならなくなる。
「そのためにも、今後は前もって解体費用を準備しておく必要がある」とは前出の米山さんだ。例えば、購入時に解体費用を供託したり、固定資産税で上乗せして徴収するなどの方法だ。